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薬価制度見直し基本方針を注視

2016年12月16日 (金)

 薬価制度の抜本的な見直しに向けた基本方針が菅義偉官房長官、塩崎恭久厚生労働相、麻生太郎財務相、石原伸晃経済再生担当相の4閣僚で決定されることとなった。

 7日の経済財政諮問会議では、民間議員が「全品を対象として使用量または実勢価格の変化幅に応じ年1回以上の薬価改定を行うべき」と提言。薬価算定方式の正確性と透明性を徹底し、国民への説明責任を果たすことなども求めた。

 最大の争点は、薬価改定の頻度と対象品目。来週中にも、関係大臣間の調整によって、「全品目」とするのか「一部品目」に限定するのかが決まる。

 新薬の開発には莫大なコストを要する。さらに、新薬の材料になる化合物が出尽くしているため、失敗するリスクも高く、開発が年々難しくなっているのが実情だ。ようやく上市にこぎ着けた新薬で十分な利益を回収できなければ、次の開発に投資することが難しくなってしまう。

 高額薬剤「オプジーボ」の議論をきっかけに、革新的新薬だからといって薬価が高いことが許容されづらくなっているが、薬を使う側にもこれから出てくる革新的新薬は高額になる可能性が高いという認識が必要になってくるのかも知れない。そうなると、これまでタブーとされてきた負担の議論は避けては通れないだろう。

 残薬の問題にも目を向ける必要がある。医師と薬剤師の連携のもと、適切な処方と服薬を徹底し、大量の飲み残しが生じないような取り組みは欠かせない。

 一方で、業界側にも身を切る改革が求められる。まずは、企業が投じた研究開発費を早期に回収し、次の新薬開発の投資に振り向けるため、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の見直しではないか。

 薬価収載の日から15年を経過した後の最初の薬価改定を経ていない、市場実勢価格の薬価に対する乖離率が、全収載品の加重平均乖離率を超えないことなどが要件となっているため、革新性が高いとは言えない医薬品まで加算の対象になっているのが実情だ。

 これでは制度の趣旨に沿っているのだろうかという疑問を生じさせるだけでなく、革新的な新薬を生み出そうとする企業の開発意欲を削ぐことにもなりかねない。

 諮問会議の民間議員も、新薬創出等加算制度について真にイノベーションを生み出す効果的、効率的な制度となるようゼロベースで抜本的に見直すとする一方で、費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることも含め、費用対効果評価を薬価の仕組みに本格導入するよう求めている。

 長期収載品を捨て、新薬の開発にシフトした企業からは基礎的医薬品を除く、革新性の低い医薬品については、「時間をかけて退場していただく」との声も上がっている。

 今後、策定された基本方針に沿って、中医協で具体的なルール作りが進められる。策定に当たっては、皆保険制度の維持を担保しつつ、革新性をしっかり評価できる仕組み作りが求められそうだ。難しい命題だが、知恵を絞ってほしい。



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