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【被験者リクルートメントの現状と課題】製薬企業が考える被験者リクルートの問題点、あるべき姿とは‐ヤンセンファーマの事例から

2017年03月29日 (水)

 製薬企業は治験の被験者リクルート業務に関して、今どのような問題意識を持ち、どう取り組んでいるのか。ヤンセンファーマの事例から紹介する。

患者の少ない疾患で苦労‐専門医も診療で余裕なし

 ――治験依頼者として被験者不足という問題をどう捉えているか。

 患者さんの中には治験に参加し、貢献したいと考えている方や、新薬候補となる画期的な治療方法を試すことができる治験自体を、自身の治療方法の一つの選択肢として考えている方もいらっしゃると思います。

 現状では、本邦の全ての医療機関を治験実施医療機関として網羅できないため、患者数が少ない疾患においては治験依頼者が選定し契約した医療機関と治験を期待する被験者のマッチングがうまくいかず、結果的に被験者不足という状況が発生していると思われます。

 このような状況は依頼者、被験者の双方にストレスを生じていると想像できます。

 ――被験者の組み入れを難しくさせている要因として、何が考えられるか(製薬企業要因、日本の治験環境要因、医療機関要因)

 高血圧症、糖尿病、高脂血症等の慢性疾患やインフルエンザ等の患者数が多い疾患の被験者組み入れは比較的容易ですが、対象となる疾患の患者数が少ない領域における治験に関しては組み入れが難しくなっています。対象患者と治験実施医療機関のそれぞれの地域あたりの密度が低くなるため、マッチングが困難となり、組み入れの確率自体が低下するからです。

 組み入れを困難にする別の要因としては、治験実施計画書の複雑化(対象組み入れ基準の限定や評価項目、検査数、来院頻度、治験実施期間の増加等)により、治験実施計画書に合致し、実施可能な被験者数が減少してしまうことです。

 希少疾患や専門的な特殊疾患など、患者数が少ない領域では各地域に被験者が集まりやすい専門的な医療機関が存在しますが、そのような施設においては、治験対象となる被験者数は多く集積されますが、対象の専門医に患者が集中してしまいます。そのため、通常の診療業務に追われ治験を実施できる時間的な余裕がなくなってしまうことが原因で、多大な時間を要する治験を受託することが困難になってきているという実情があると考えられます。

治験依頼者の発想に工夫

 ――製薬企業が被験者リクルートで実施している一般的なアプローチ。

 医師、CRCへの治験内容説明後に被験者リクルート方法を協議し医療機関内でどのように被験者を見つけていくのかを治験を依頼する前に決めていくのが一般的です。依頼後は、院内のポスターや地域の新聞広告等、効果的なリクルート方法を治験責任医師やCRCなどと個別に検討し、倫理審査委員会(IRB)での承認後にリクルートを実施します。

 ――ヤンセンが国内治験の被験者リクルートで実施している具体的なアプローチ。

 通常は個々の治験実施医療機関ごとに被験者をリクルートする方法(院内のポスター掲示、医局での協力依頼のための説明会など)を協議して実施します。それに加え、社内外のインターネットのウェブサイトを通した被験者募集や患者パネルを所有した企業と協働して最も効果的なリクルート方法をご提案いただきながら進めることもあります。

 ――被験者募集会社の活用についてどう思うか。

 被験者目線での治験の参加しやすさなど、治験依頼者として今まで考えていなかった観点からの医療機関の選定戦略など、治験を開始する前の段階からの協働により、治験を予定通り進めていくことが実現するようになればよいと思っています。医療機関にもさらに認知してもらい、個別の状況にも対応できる被験者募集スキームをご提案いただくなど、治験開始前から治験期間全体を通して、局面ごとに対策を提案いただけるなど、さらなる進化を期待しています。

 また、治験というと一般的にあまり良い印象はありませんが、最先端の治療を受ける機会であったり、将来的には自分と同様の悩みを持つ患者さんの役に立てる可能性があったりすることなど、社会にとって必要なことであるという啓蒙活動など、社会が治験に対して理解と協力が得られやすい環境づくりにもご貢献いただけるものと期待しています。

エントリーでCROと協働

 ――被験者不足解消に向け、治験を実施する医療機関側に何を提案していくか、CROとの連携体制は。

 医療機関側には、治験にご参加いただくことのできる方の数を事前に高い精度で合意していただくことが治験を円滑に進める一番の鍵であると考えています。しかし、計画通り進まないような場合は、その医療機関内外の患者さんの分布や候補患者さんが最終的に治験参加の同意に至る一連のルートのどこに問題があるか、それを改善するためにどういった方策があるのかということを提案させていただきたいと考えています。その被験者募集会社もオプションの一つと考えています。

 CROでは契約上、被験者のエントリー数とその達成時期を明確にした上で、契約書に落とし込んでいる場合もありますが、エントリーに関しては依頼者とCROで協働して問題解決にあたることが肝要かと思います。

 ――患者視点に立った臨床試験を実現していく上で、製薬企業としてやるべきこと。

 患者さんが被験者を望まれるのであれば、可能な限りその機会を提供し、実際に治験に参加していただいた方に対しては安全性を第一に臨床試験を実施できるよう企業努力するべきであると考えています。

 また、患者さんが望む情報を法令や規制などの一定のルールの中で発信していくことも重要な点であると考えています。さらに前述の通り、プロトコルの複雑化は、該当する患者さんの治験に参加する機会を奪ってしまうことにもつながりかねないと考えています。今後どのようにやっていくのか手探り状態ではありますが、患者目線に立って、参加しやすい臨床試験をデザインしていくことも製薬企業としてやるべきことであると考えています。



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