握手する左から上原、古森、菅田の3社長
富士フイルムホールディングス、大正製薬、富山化学の三社は13日、都内で会見し、戦略的資本・業務提携を行うことで基本合意したと発表した。事実上、富士フイルムが富山化学を買収するもので、富山化学が約300億円の第三者割当増資を実施した上で、富士フイルムは株式公開買い付け(TOB)を行い、完全子会社化する。最終的に富士フイルムが66%、大正製薬が34%の株式を保有する予定で、富山化学が上場廃止となる可能性もある。医薬事業への本格進出を狙う富士フィルムが国内中堅の富山化学を手中に収めたことで、製薬業界の再編劇は異業種の参入という新たな局面を迎えた。
富士フイルムは、「メディカル・ライフサイエンス事業」を成長事業の一つと位置づけ、医療用医薬品事業に本格参入する道を模索してきた。一方、導出戦略を進めてきた富山化学は、昨年度3月期決算の最終利益で87億円の赤字を計上。厳しい環境に置かれた中堅企業として、増大する研究開発費やグローバル化対応が急務となっていた。
会見で富士フイルム代表取締役社長・CEOの古森重隆氏は、今回の戦略的提携について、「診断が中心だったメディカル・ライフサイエンス事業を治療に拡大し、大きく成長させていくためのステップの一環」と強調。「技術的シナジーの大きさが(富山化学を)パートナーに選んだ最大の理由」と語った。
一方、富山化学取締役代表執行役社長の菅田益司氏は「企業価値を高めるベストな選択だったと確信している」と強調。提携の目的が技術融合、リスク回避、資金調達、利益構造の転換にあったとした上で、第三者割当増資で得た約300億円を全て研究開発に投資すると明言した。
富山化学は、インフルエンザに効果が期待される抗ウイルス薬「T”705」、抗リウマチ薬「T”5224」、アルツハイマー病治療薬「T”817」といった大型パイプラインを保有している。この点を古森氏は「高い成長性が見込め、競争力あるパイプラインを多く保有しており、新薬上市率が高い」と高く評価。「富士フイルムが持つ画像診断技術、乳化分散技術、FTD技術を創薬に生かして、異業種による独自でユニークな医薬品事業モデルの創出を目指したい」と意気込みを語った。
富士フイルムのメディカル・ライフサイエンス事業は、年間売上高で約3000億円規模だが、2018年を目処に、1兆円規模の総合ヘルスケアカンパニーへと成長させたい考えだ。
- 【富士フイルム】医薬品参入の第1弾はDDS抗癌剤
2007年04月13日