小紙の初夏恒例の大型企画として、すっかり定着した感のある「CRO/SMO特集」には今回、36社、1組合に登場いただいた。ここ数年の淘汰・再編の動きから、取材対象が減少すると見込んでいたが、幸いにも企画を大きく縮小する事態にはならなかった。日本CRO協会の年次業績報告や新たな企業が参入している現状から見ると、まだ市場は成長するものと考えることができるだろう。
全ての企業を取材したわけではないが、各社経営トップの考え方を総括してみる。市場が成長するとは言ったものの、国内でCROとSMOの関連市場が共に拡大していくのではないようだ。シミックの中村和男氏、イーピーエスの厳浩氏の言葉を借りるまでもなく、一部上場企業など自力に勝る大手CROは、既に海外拠点を整備するなど、国際共同治験、アジアンスタディへの準備を着々と進めている。
また、国内外におけるCRO事業は、まだしばらくは二桁成長が見込まれている。モニターの数も需要に追いつかない状況にあり、その確保が急がれている一方で、闇雲に採用して増員するのはリスクがあると指摘するトップもいる。企業の事業展開に見合った人員規模が肝要だということか。
SMOでは、再編の動きが進んでいる。財政基盤、企業体力がCROに比べて脆弱であるため、市場環境の変化に振り回されてしまう企業も少なくない。主要な事業内容にもよるが、ある程度の財政と人材の規模が必要になるため、各社はM&A、グループ化を加速させている。今後も再編劇は続くだろう。
さらに、SMO同士だけではなく、CROが子会社化して一層の効率化を図ろうという動きも見られる。CROとSMOが別会社として存在しているのは、日本独特の感情に流されてきた特異な状況であり、海外の諸国では見られない。
治験支援受託事業が日本に誕生して以来20年が経過しようとしている。成熟期に入り、生産性が問われるようになってきた。依頼側のメーカーと治験実施サイトである医療機関というクライアントの違いはあっても、医薬品開発を支援するという同様の仕事を別々の企業が行うことは、どう考えても非効率であり、生産性の向上も望めないのだから、当然の動きといえる。
CRO、SMO各社が共通して重点に据えているのが「人」である。IT、システムも含め、いかなる事業に取り組んでいくにも、結局、人がキーポイントになることを各社のトップは十分に認識している。
個々の企業に限らず、日本CRO協会、日本SMO協会、さらにはSMOネットワーク協同組合などが、教育研修に注力しているのも、各社の人材に対する考えが一致しているからだろう。
病気に苦しむ患者がいれば医療が存在する。医療があれば医薬品が必要とされる。必要性があれば医薬品開発という仕事は消滅しない。新薬を開発できる数少ない国の一つである日本は、医薬品開発支援業務においてもアジアの盟主でなければならないが、日本だけが仲間はずれになる懸念もあるのが現状だ。
医薬品開発とCRO・SMO産業界の応援歌として、来年以降もこの企画を継続していきたい。