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製薬産業のグローバル化が進む中、日本発の世界的新薬創出に向けて、競争力強化が求められている。また、国内に目を向けると、医療費抑制策や、薬価制度改革をはじめ様々な課題を抱えている。
そのような厳しい環境の中、5月の日本製薬団体連合会評議員会および日本製薬工業協会総会で、それぞれの新会長に竹中登一氏(アステラス製薬共同会長)、庄田隆氏(第一三共社長)がそれぞれ選出された。
竹中、庄田の両氏とも、新しい時代を担う経営者として、華々しく登場したリーダーだけに、業界団体も新たな時代を迎えたことだけは確かであろう。
この2人が辿った経歴をみると、まさに医薬品産業の変化と共に生きてきたことが分かる。
日薬連の会長となった竹中氏は旧山之内製薬の主力品である降圧剤「ペルジピン」や前立腺肥大症治療薬「ハルナール」の開発に携わるなど研究畑の出身である。
日本企業が将来を見据え、本格的に研究開発へ力を入れ始めたのが1970年代から80年代だが、この時代は創薬も,バイオテクノロジー分野の急速な進展により、生命科学が重要な研究基盤となった。その現場に研究の第一戦にいたのが竹中氏だ。
他方、製薬協の会長になった庄田氏は、出身企業である旧三共において、長く欧州での駐在を経験し、海外展開の先頭に立ってきた。旧三共の欧米の拠点づくりに活躍する一方、99年には海外医薬営業本部長を務めるなど、文字通り、国際畑を長年歩んだ人物。80年代から90年代にかけて、日本の医薬品業界は、“グローバル化”が至上命題となっており、こうした中を第一戦で活躍してきたのが庄田氏だ。
この2人、理系出身者でもあり、「薬のことがよく分かる経営トップ」と、よく例えられるが、出身企業の社長時代には旧藤沢薬品、旧第一製薬との経営統合も実現させるなど、この点でも2人は業界に大きな影響を及ぼした経営者である。
まさにグローバル時代を担うにふさわしい業界のニューリーダーといっていいだろう。
こうした2人が今後の業界を引っ張ることになるわけだが、現在の医薬品業界には決して明るい未来があるわけではない。むしろ、厳しい難題ばかりが待ち受けている状況だ。
グローバル化が進む中、世界的新薬創出に向けて、日本の製薬業界は競争力強化が求められている。さらに、国内に目を向けると、医療費抑制策や、薬価制度改革をはじめ様々な課題を抱えている。
それだけに、業界は共通する課題に対し、一致団結して対応していくことがこれまで以上に求められる。
とりわけ、薬価制度改革については昨年来、中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で、様々な課題が提起され、また、宿題も残された。特に,業界側が提案した新しい制度については08年度以降、議論することになっており、いよいよ議論も始まろうとしていることから、2人にとって薬価問題への対応が,まずは第一関門ということになるだろう。
日薬連、製薬協とも日本の製薬業界を代表する団体である。ニューリーダーといわれる2人が業界活動で、どのような手腕を発揮していくのか。今後の取り組みが期待される。
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