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製薬業界は国民に向き合う時期に

2008年8月4日 (月)

 福田改造内閣の課題は、首相就任以来唱えてきた「国民目線での改革」を、信頼を得られる形で実行できるかだ。厚生行政関係でも医療崩壊、薬害問題、高齢者医療制度、年金記録問題などがある。最近の物価高なども含め、国民の不安をかき立てる政治・行政問題が相次ぎ、国民の生活に根ざした取り組みが急務となっているからだ。

 とりわけ、国民生活に最も近い厚生行政に問題が山積していることで、国民の不信の根は深いと認識すべきだろう。

 その厚生行政の中で活動する製薬業界に目を転じると、福田改造内閣のテーマがそのまま跳ね返る。

 医療用医薬品の使用者は医師や薬剤師ら専門家だとして、一般の国民に目を配った主張や行動をどこまでしてきたかというと、十分とはいえない。製薬産業への信頼感が7割を超える一方で、「情報を積極的に提供している産業」「消費者の声を聞こうとしている産業」と認める人は2割程度に過ぎない、という日本製薬工業協会の調査結果もある。

 そこで、業界がまず「国民目線」で主張し、行動しなければならないテーマは、薬価制度改革と薬害再発防止だと考える。国民にとって影響を与えるテーマでありながら、これまでの経緯を見ると、及び腰に見えるのが気になる。

 国民のためと思うなら、正々堂々、真正面から主張し、世に問うことを求めたい。

 日本製薬団体連合会が提案する新薬価制度案は、研究開発費を早期に回収し、次の新薬開発投資につなげるため、特許期間中は薬価を下げない「薬価維持特例」の創設が柱。後発品が出ると価格は大幅に引き下げられる。新制度案の効果として、これまでにない新薬開発への注力が可能になるとアピールしている。

 新薬を創出できなければ、経営が厳しくなりかねない覚悟ある提案であり、制度的にも大胆な内容だ。

 しかし、議論の場である中央社会保険医療協議会への説明が、委員におもねるように見えたのは残念だ。現行ルールの延長線上にあるようなことや、制度改革をしても薬剤費は過大に増えないことが強調された印象を与え、提言の幹が霞んでしまった。

 政府の医療費抑制路線の中で語るのは一理あろうが、よい薬の開発には費用がかかり、価格も相応でなければならず、抑制路線が果たして国民のために新薬を生み続けるのに適切かの考察をすべきではなかったか。抑制路線が問題提起されている今、国民に問うてもよかったのではとも思える。

 もう一つの課題の薬害は、戦後半世紀近く続く、業界にとっても大問題。しかし、再発防止策の積極的な主張、提案が見えないのは残念だ。過去の薬害事件では、被害防止の第一義的責任は企業にあるとされてきた。

 厚労省は検討委員会を設置し、再発防止策の検討に乗り出したが、業界には薬価制度同様に、再発防止の総合的な提言を行うことを求めたい。

 検討委では現行の安全対策の強化が議論されてきたが、それだけでは薬害再発防止策にはならない。薬害は、単なる副作用被害にとどまらず、対策をとるべき企業、医療現場、厚労省が見過ごすことによる構造的なミスが背景にあるからだ。そのため防止策は、国だけでなく関係者が重層的に意見を出し合い、それぞれが取るべき行動を明らかにしながら、作るべきだろう。

 いずれの課題も秋から本格論議が始まる。国民の立場を確認して臨みたい。




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