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今月行われた北海道洞爺湖サミットでは、地球温暖化防止がテーマの一つとなった。一連の会合を通じて、地球温暖化防止に向け、2050年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの世界全体の排出量を半減させることを目標に掲げた。この目標は先進国だけでなく、中国やインドなど新興経済大国を含む世界全体で「共有」し、国連気候変動枠組み条約(気候変動条約)の締約国会議で採択するよう求めることで合意した。地球環境に関し、各国の思惑のある中で、まずは枠組み構築を目指すとしたことは一歩前進として評価できるだろう。
しかし、環境問題はG8を中心とした枠組みだけで効果を上げることは難しく、産業界との協調なくして解決はあり得ない。
こうした地球環境に関心が高まる中で、製薬業界では試行的だが、新しい取り組みを始めている。その一つが、東京都環境局自動車公害対策部の要請を受け、日本製薬工業協会がMR活動での自動車使用を見直そうというもの。
都は、今年3月に新しい「東京都環境基本計画」を策定し、少ないエネルギー消費で、快適に活動・生活できる都市を目指し、東京から、世界の諸都市の“範”となる持続可能な都市モデルを発信していくことを明らかにした。
とりわけ、「健康で安全な生活環境の確保」では、▽大気汚染物質のさらなる排出削減▽化学物質等の適正管理と環境リスクの低減▽環境の「負の遺産」を残さない取り組み▽生活環境問題の解決(騒音・振動、悪臭等対策)――などを課題にしている。
製薬協の取り組みはこうした点を踏まえつつ、「都内の自動車交通に起因して排出されるCO2排出量の現状や交通渋滞の状況を踏まえ、環境への負荷が低く効率性の高い都市空間を創出し、かつ過度な自動車依存からの脱却を進める上で、実効性のある仕組みの構築を目指したい」との方針を立て、まずは試行期間終了後に、取り組み状況や結果を検証し、MRのあるべき営業スタイルを検討したい考えだ。
現在は試行期間であり、取り組みに参加しているのは常任理事会社の13社。見直しの対象となるのは、取り組み会社に所属し、主に都内を活動拠点とするMRが使用する自動車約2000台だ。
具体的には、▽自動車使用から徒歩、自転車、公共交通機関利用への転換▽カーシェアリング(具体例:複数の担当者が担当拠点への相乗りなど)▽過度な自動車利用からの脱却(ノーカーデーの設定など)▽低公害車の導入(低燃費車やハイブリッドカーなど)――などに取り組んでいる。
もちろん、課題もある。各社によって、エリア戦略や製品戦略も異なるため、MRの活動も違ってくる。既にハイブリッド車を導入するなど、低公害車への切り替えを積極的に行ってきた企業もあると聞く。それだけに、一律な取り組みは難しい。
ただ、今回の試行的な取り組みを通じて、情報の共有、課題の抽出などを行った上で、業界全体が自動車使用抑制に取り組むことを打ち出した意義は大きい。
製薬業界は医薬品という生命関連商品を扱う業界だ。それだけに、環境問題にも積極的な取り組みが求められる。個々の企業の取り組みだけでは限界があるだけに、業界がまず、自動車使用抑制に向け団結して取り組もうとする姿勢は評価できる。試行期間で得られた結果をもとに、どのような施策を打ち出すのかに注目したい。
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