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医療IT化、台湾は行政が後押し

2008年7月25日 (金)

 日本が国を挙げて取り組んでいる「医療IT化」だが、実態はどうも、笛吹けど踊らずのようだ。9日に開催された保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)2008年度業務報告会では、医事コンピュータ部会の事業として、昨年に引き続いて、レセプト完全オンライン化の実現に向けた活動が、重点課題に据えられている。

 400床以上病院では今年4月から実現し、5月請求分で738医療機関が既に実施済みだが、問題は来年4月に義務化期限が迫った400床未満病院(レセプト電子請求、レセコンにレセプト文字データ変換ソフト適用可能)と薬局(レセコン有)である。いずれも、残り9カ月でレセプト電子請求機能処理システムを導入しないと、保険請求ができなくなることから、薬剤師会なども説明会をスタートさせるなど対応を急いでいるが、期限内に実現する可能性については疑問視する向きもある。

 業務報告会では、台湾の医療情報システムを視察した報告も行われた。それによると、医療制度改革も医療IT化も一気に進んだという。医療保険制度は、50年の労働保険から、58年公務員保険、85年農民保険、90年低収入戸保険が順次導入されたが(この時点での加入率は59%)、95年には強制加入の単一医療保険システム「全民健康保険」が導入され、加入率は99%に達した。

 総額予算制度を採用するなど医療費制度も特徴的だ。毎年9月に行政側と医師会で医療費の予算を編成し、予算不足を生じさせないよう年度途中で1点当たり金額(診療行為は保険点数制)を変更し、薬価減額が生じた場合には当初総額予算も減額するという、日本では絶対に考えられない政策をとっている。

 医療費請求・支払い方式は日本と似ていて、被保険者と医療機関、そして保険者と支払基金を合体したような組織体「中央健康保険局」の間で、保険料、診療費、一部負担が流れている。

 一方、オンライン請求システムは、単一医療保険に切り換えた95年に導入し、それまでの外来11%、入院19%というオンライン請求率は、翌年には共に90%に達し、06年6月時点では99・98%という驚異的な数字に至っている。オンライン化実現には、全額概算支払い(書面90%)や支払期間15日(書面30日)、請求ミスの情報提供などによるインセンティブ、誘導策が奏功したようだ。

 また、日本では遅々として進まない医療ICカードは、02年から試行を開始し、たった1年間でほぼ全人口をカバーした。本格実施の04年からは原則的に同カードだけの運用となっている。初期導入予算は大きいが、システム構築によるコスト削減効果はさらに大きいと試算されたため、全医療機関へICカードリーダーの無償配布、データアップロード通信費の4年間補助と奨励金制度など、行政が積極的に動いた結果のようだ。

 台湾での医療制度改革、医療IT化は、行政の強力なリーダーシップ、インセンティブなどにより一気に実現したと言える。視察結果を報告した副部会長は、当然、台湾とは人口規模、医療制度の歴史、国民性・文化、既得権益、インフラ整備の現状など事情は異なるものの、「日本も見習うべき点が多いと痛感した」と率直に感想を述べている。

 日本には医療IT化を推進するための何かが足りないことは明白であり、起爆剤が必要な時期に来ているのではないだろうか。




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