島津製作所は6月30日、頭部および乳房の検査に特化したPET装置「PositView」が米国食品医薬品局(FDA)の市販許可を取得し、米国で発売を開始した。同社は、2021年3月から同製品を「TOF-PET装置BresTome」として日本国内で発売してきている。
PET(陽電子放射断層撮影法)は、特定のターゲットに集まる薬剤を体内に投与することで、非侵襲的にアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病、AD)の原因物質とされる異常蛋白質(アミロイドβやタウ)の脳内蓄積やがんなどを画像化する診断手法。
同製品は、PET検出器ホールが直径28cmで、全身用PET装置の直径約80cmに比べて小さくすることで、対象部位に近い距離で撮像できる。これにより、PET画像の解像度を全身用PET装置の2倍程度まで高めて、高精細なPET画像を提供できる。
米国では世界に先駆け、AD治療薬の投与判断やその治療効果判定において、アミロイドβの脳内蓄積の証明用途でアミロイドPET検査が実施されており、同社は同装置によって検査需要に対応していく。
また今後、ADの治療件数の増加や研究進展に伴い、アミロイドPET検査の需要はさらに高まるとみられている。加えて、ADのもう一つの原因物質とされるタウ蛋白質の脳内蓄積の画像化での利用も想定している。
タウ蛋白質は、脳内の微小な部位に局所的に集積することがあり、またその蓄積部位と認知症の症状とに相関があることが知られている。今後のタウ蛋白質をターゲットとした治療開発や、その脳内分布の研究進展に伴い、高解像度のPET装置によるタウPET検査の必要性が高まると期待されている。