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進行非小細胞肺癌患者の一次治療として、イレッサとカルボプラチン+パクリタキセル併用化学療法の有効性を直接比較したアジア共同第III相試験「IPASS」の結果、イレッサが無増悪生存期間で優越性を証明したことが明らかになった。主要評価項目に設定した無増悪生存期間の非劣性を上回る結果で、東洋人で初めてイレッサの有効性が証明されたことになる。IPASS試験の詳細な結果は、秋に開かれる欧州癌治療学会などの国際学会で発表される予定だ。
IPASS試験は、進行非小細胞肺癌患者を対象に、一次治療としてのイレッサの有効性・安全性・忍容性を、カルボプラチン+パクリタキセル併用化学療法と、直接比較したアジア共同の非盲検無作為化比較試験。主要評価項目は無増悪生存期間で、イレッサのカルボプラチン+パクリタキセル併用化学療法に対する非劣性を証明することが目的とされた。
IPASS試験には、化学療法の治療歴がなく、腺癌で喫煙歴のない進行非小細胞肺癌患者1217例が参加。日本人は233人が登録された。その結果、イレッサはカルボプラチン+パクリタキセル併用化学療法に対し、無増悪生存期間の優越性を証明し、非劣性を示すという主要目的を上回る成績を得た。
イレッサの有効性に関しては、治療歴のある非小細胞肺癌患者を対象に、ドセタキセルと有効性の比較を行った「INTEREST試験」で“同等”と、非劣性を証明する結果が得られている。ただ、INETRESTは欧米人を中心とした試験で、治療歴のある患者に投与する二次治療、三次治療として実施されたものだった。
一方、東洋人で効果が高いとされながら、ドセタキセルと比較した国内第III相試験では、イレッサの非劣性が証明されなかったことに加え、後治療の有無や試験デザインなどの問題点が指摘されていたことから、東洋人でイレッサの非劣性を証明することを目的とした、アジア共同試験「IPASS」の成績に注目が集まっていた。
それだけに、IPASS試験の結果、日本人を含む東洋人で初めてイレッサの優越性が証明され、しかも一次治療としての有効性が示されたことのインパクトは小さくない。EGFR変異の有無を含めた副次的評価項目、サブグループ解析、バイオマーカー解析など、IPASS試験の詳細な成績に関しては現在評価中で、その発表が待たれる。
既にイレッサは、日本人で腺癌、非喫煙、女性、EGFR変異のある非小細胞肺癌患者に対し、非常に高い効果を示す成績が多く示されてきた。一方、国内では副作用の間質性肺炎が大きな問題となり、市場撤退論もくすぶっている。それに加え、ドセタキセルに対する非劣性を証明できなかった国内第III相試験の結果を受けて、イレッサの評価をめぐる議論が巻き起こっていた。
その意味で、アジア共同のIPASS試験で、イレッサの優越性が示されたことは、日本人でも一定の臨床的有用性が裏付けられたと言えそうだ。
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