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厚生労働省は1日、非小細胞肺癌に対する化学療法で、分子標的型肺癌治療薬ゲフィチニブ(販売名「イレッサ」、アストラゼネカ)が、現在の第一選択薬であるドセタキセルより、「優先して投与を積極的に選択する根拠はない」とするこれまでの見解を維持することを決めた。
ゲフィチニブの承認条件とされた日本での臨床試験の追加解析で、全生存期間(中央値)がドセタキセルの14.0カ月に対し、ゲフィチニブは11.5カ月にとどまり、ゲフィニチブの非劣性が証明できなかったとによるもの。アストラゼネカは、日本を除く欧米・アジア地域での大規模臨床試験(INTEREST試験)で、ドセタキセルと比較し全生存期間で非劣性が示されたことを調査会に提出したものの、調査会側は日本の解析結果を採用した。同省医薬食品局は、アストラゼネカ対し、日本の試験結果について医療関係者に情報提供するよう指導する。
調査会は、ゲフィチニブの副作用として間質性肺炎などによる死亡が相次いだことから、臨床での取り扱いについて検討していた。問題とされたのは、ドセタキセルに対するゲフィチニブの非劣性は証明されなかったものの、両投与群に後治療として各種の抗癌剤が混在しているケースもあったことからから、確かな評価をするために、後治療の影響などを含めた追加解析を求めていた。
それを受けて、アストラゼネカが日本での第III相試験結果を追加解析した結果、全生存期間でゲフィチニブは、ドセタキセルと比べ非劣性であることを示すことができず、後治療の全生存期間への影響の正確な評価も困難とされた。また、女性・男性、腺癌とそれ以外、喫煙歴の有無、年齢や罹患歴などのサブグループに分けて解析した結果でも、ドセタキセルに対しゲフィチニブの効果が高いというサブグループも見出せなかった。
一方、治療歴のある局所進行または転移性非小細胞肺癌患者を対象とした「INTEREST試験」では、1466例の解析で、ドセタキセルと比較し、全生存期間におけるゲフィチニブの非劣性が得られている。
アストラゼネカはこの2試験の結果を受け、ゲフィチニブは「化学療法歴のある非小細胞肺癌治療の有効な選択肢の一つ」との見解を示した。
しかし厚労省は、国内試験の結果を踏まえ、ゲフィチニブをドセタキセルに優先して投与する根拠はないとして、国内第III相試験の結果を、添付文書の「その他の注意」欄に記載させることを決めた。
なお、ゲフィチニブについては、「投与開始後4週間は入院またはそれに準ずる管理の下、間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分行う」との安全対策を継続すれば、「手術不能または再発非小細胞肺癌の治療で臨床的に有用」との見解は変えていない。
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