“
会見する手代木氏(右)とFourteau氏
塩野義製薬は1日、米国サイエル・ファーマ(ジョージア州アトランタ)を買収すると発表した。会見で手代木功社長は、「自社開発パイプラインの順調な進捗状況から、米国での自販体制の確立を急いでいる」と話し、高い成長率と安定的な収益性、強力な営業・マーケティング能力、新規パイプラインのフェーズ後期から上市までの能力を持つサイエルの買収は、米国での本格展開の第一歩と位置づけた。買収費用は約11億ドル(約1177億円)、転換社債の償還を含む総額は14億2400万ドル(約1523億6800万円)で、手元現金約470億円とブリッジローン約1100億円で充当する予定だ。
手代木氏は、今回の買収で期待される効果として、[1]サイエルのMR770人による全米販売体制の飛躍的強化[2]上市・販売で優秀なノウハウを活用することによる営業インフラ構築の時間とコストの回避[3]塩野義の重点領域である循環器・代謝等の相乗効果の追求[4]有力パイプラインの自社販売による収益力向上[5]米国市場での着実な経営実績やグローバルでの人材育成――などを掲げた。
特に、サイエルのフェーズ後期開発品を上市させる能力に関しては一目置いており、塩野義として最速で2012年上市を見込んでいるPIIb以降にある新薬S‐2367(肥満)、S‐777469(アトピー性皮膚炎)、インテグレース阻害剤(HIV感染症)の承認取得に関し、FDAと良好な関係を保っているサイエルの広範な人脈ネットワークとノウハウに大きな期待を寄せている。
クレストールの販売時には、自社で国際展開しなかった。「当時は1品目だけであり、米国へ展開するにはリスクがあった。年203品目をコンスタントに上市できる今が、米国へ展開するタイミングだと判断した」と説明した。なお、クレストールは従来通りアストラゼネカがグローバルで販売する。
また、欧州への展開について手代木氏は、「当社とサイエルのリソースを考えれば、まずは米国でのプレゼンス確立が優先だ」とし、その後に欧州展開も検討する可能性を示唆した。
一方、サイエルCEOのパトリック・P・フォートー氏は今回の買収について、「130年の歴史と、素晴らしい開発能力、製造能力を持つ塩野義製薬と、一緒になれることを誇りに思う。営業は営業を、開発は開発をというビジネスプラットフォームを継続することを確認した。顧客と従業員を尊重する両社の企業風土は同じであり、異文化でもシナジーは得られる。完璧な統合が成功の鍵だ。塩野義製薬を世界の中でユニークな企業にできる」と将来展望を述べた。
“