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新型コロナ薬、適正使用が課題

2020年05月22日 (金)

 新型コロナウイルス感染症治療薬として抗ウイルス薬「レムデシビル」が国内で初めて承認された。通常よりも早期に承認できる特例承認制度が適用され、既に患者への投与が開始されている。新型コロナウイルス感染症に苦しみ、人工呼吸器等が必要な重症患者にとっては待望の治療薬となった。

 承認の根拠となった海外の第III相試験では、5日間の投与で10日間投与と同程度の有効性が確認され、治療期間を短縮できる可能性が示された。

 ただ、忘れてはならないのは、これらの試験データだけでは有効性・安全性に関する情報が極めて限定的であることだ。

 米国は公衆衛生上の緊急事態宣言が解除される期間に限り、レムデシビル投与を認める緊急使用許可の一時的な措置を取り、正式な承認は行っていない。今もなお、臨床試験が継続している。

 国内の特例承認では、投与症例の安全性・有効性に関するデータの収集や現在実施中の臨床試験成績を速やかに提出することなどを承認条件としたが、日本人の投与例は極めて少なく、医療現場では患者への投与判断など適正使用で不安が残る。

 通常の医薬品に比べると、潜在的なリスクが否定できず、予期せぬ副作用が認められた場合の体制ができているかが心配だ。

 安倍晋三首相は、現在治験が進行中の抗インフルエンザ薬「アビガン」をはじめとする新型コロナウイルス感染症治療薬候補について、有効性が確認された場合は、早期に薬事承認する考えを表明した。

 今後、レムデシビルに限らず、有効性や安全性の科学的根拠が十分に確立されていない新型コロナウイルス感染症治療薬が相次ぎ登場することが予想される。エビデンスが乏しい中でも、患者の症状に応じてどの薬剤を投与するのが適切か明確な基準が必要になる。

 IQVIAの調査によると、新型コロナウイルス感染症治療薬の臨床試験は182種類の薬剤が治験実施、計画段階にあり、治療薬では世界で400件以上の試験が進行している。

 ただ、実施されている治験のうち、実薬群、プラセボ比較群を用いた無作為二重盲検試験は約15%にとどまり、試験結果の解釈が難しいとの指摘も出ている。

 これら開発薬剤に対する承認のハードルをどう設定していくかも大きな課題となってくる。新型コロナウイルス感染症に対する治療選択肢は多いに越したことはないが、新型コロナウイルス感染拡大の収束に向け、状況は刻々と変化している。

 医療現場で安心して使える薬剤であるか、患者にとってどの薬剤が最もベネフィットがあるのか、一つひとつの薬剤の価値について丁寧に審査してほしい。



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