政府は25日、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言を全国で解除した。48日間続いた不要不急の外出自粛要請や、店舗の休業要請、イベント開催自粛の段階的な解除が進められていくことになる。ただ、27日現在の米ジョンズ・ホプキンス大学の集計では、全世界で559万人が感染し、死者は約35万人に達するなど、依然として感染拡大は続いているのが現状である。
国内でも外出自粛等の緩和によるクラスター発生など、第二波、第三波の懸念が払拭されたわけではない。ウイルスという目に見えない存在との共存に向け、厚生労働省が専門家会議の意見を踏まえ公表した新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を取り入れていくことになるのだろう。
一方、緊急事態宣言下でも生活の維持に必要な医薬品、日用品を取り扱う業態として営業を続けていたドラッグストアや薬局は、店舗運営などの事業継続と共に、来店者や従業員の感染防止対策という課題に正面から取り組まざるを得ない状況となった。
特に店頭では、来店者と従業員の相互飛沫感染リスクの軽減を図る取り組みが現在も実施されている。レジ前のビニールカーテン等の設置やレジスタッフへのゴム手袋の着用、そして現金の受け渡しを金銭トレーで行うことも徹底された。
来店者に対しては、入口での手指消毒用アルコールの設置、レジ待ち行列で密集しないようソーシャルディスタンスとしての待ち位置の設定も行われた。中にはAIカメラを活用し、三密(密閉空間、密集場所、密接場面)を避けるため、店内の混雑状況を事前に来店者に知らせる仕組みを導入する企業もあった。
こうした中、今月14日には、日本チェーンドラッグストア協会を含む小売業関係12団体が連名で作成した「新型コロナウイルス感染防止ガイドライン」が公表された。政府の基本的対処方針や「新しい生活様式」の実践例も踏まえ、基本的考え方と具体的取り組みを定めたものだ。内容は、各店舗の実情に応じた感染予防対策、従業員の感染予防・健康管理、買物エチケットに係る顧客への協力依頼・情報発信などを中心にまとめられている。
ドラッグストアが該当する内容として、「一般医薬品や化粧品のカウンセリング時に、顧客との真正面での立ち位置を避け、適切な接客時間に留意する」「必要に応じ高齢者・障害者・妊婦等の優先時間帯の設定を検討する」などの点も付記。店舗における新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防策を推進していく考えを示した格好だ。
今後、ドラッグストア等の小売業界に限らず、「新しい生活様式」を取り入れた対応が求められる。ある意味では逆境とも言えるが、それをチャンスと捉えつつ、新たな時代に向けた取り組みにつながるよう期待したい。