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コロナ禍、かかりつけの再考契機に

2020年06月05日 (金)

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、薬局経営にも影響を及ぼしている。日本薬剤師会が幹部の52薬局を対象に行った緊急調査で、4月の技術料収入が平均で2割減少したことが分かった。外出自粛により、医療機関の外来患者が減少すると共に処方日数が長期化し、来局者数が大幅に減ったことなどが主な要因としている。

 日薬幹部は「5月は3割減もあり得る。6月はもっと厳しくなるだろう」と危機感を示している。このような状況が続けば、まだ医療保険で食いつないでいけると思われていた薬局の淘汰がいよいよ始まるかもしれない。

 興味深い調査結果がある。長野県の上田薬剤師会が会員薬局の経営状況を把握するために行った緊急アンケート調査である。3~4月にかけての収入減は平均1割程度で、日薬の調査と比べるとダメージが小さい。処方箋調剤以外の部分で「増加」もしくは「変わらない」と回答した薬局が6割を超えていたことが影響したと見られる。

 ポイントとなったのが、医療機関の受診をためらった人たちである。現在は、新型コロナウイルスの感染リスクを抑えるためにも、医療機関を受診せずにOTC医薬品で対処できるのであれば、その方がありがたいと考える人が出てくるのは自然であろう。

 実際、上田薬剤師会の多くの会員薬局では、明らかにかぜであったり、単なる鼻炎と分かる人には解熱剤や鼻炎薬を購入してもらうなどの対応をとっていたという。

 中には、無水エタノールを使って手に入りにくい消毒液を作る方法をアドバイスする薬局もあった。地域の薬局が医療機関に受診するかどうか迷った人たちの受け皿となり、生活者の不安解消に一役買ったことが功を奏したと考えられる。

 もちろん、上田薬剤師会でも多くの薬局が処方箋調剤を経営の屋台骨にしており、上田という地域性も有利に働いた部分はあるだろう。

 しかし、今回の新型コロナウイルス感染症流行のような想定外の変化に対応するためには、処方箋調剤以外の武器を持っておくことの重要性を痛感させられたのではないだろうか。

 特に薬局の相談機能は大事だが、その機能を持つためにはコストがかかり、スペースも必要なOTC医薬品や衛生材料、介護用品などを日頃から取り扱っておかなければならない。

 かかりつけ薬剤師・薬局と言われて久しいが、依然として体調に変化が見られたとき、薬局に相談してみようという意識が生活者の中に浸透してしているとは言い難いのが現状である。

 かかりつけ薬剤師・薬局は医療保険制度上のものから、患者・生活者目線への転換が求められており、今回のコロナ禍はそれを如実に浮かび上がらせた。患者との関わり方を再考し、業務のあり方を見直すきっかけにしたい。



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