PV業務の効率化を実現‐AIやRPAの技術活用
米アリスグローバルは、次世代型の安全性管理システム「LifeSphere MultiVigilance10」を日本市場に投入した。世界の製薬企業や米国食品医薬品局(FDA)と共同で開発したもので、人工知能(AI)やロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)などの技術を活用し、ファーマコビジランス(PV)業務の効率化を支援する。このほど日本語化対応が完了し、日本での実装が可能になった。今後、国内大手製薬企業での活用が本格化する見通しで、導入企業を増やしたい考えだ。

長澤氏
同社は25年以上前から製薬企業のPV部門に向けて安全性管理システムを提供し、全世界で一定のシェアを維持してきた。約5年前に次世代型システムの開発に着手。FDAや製薬企業にプロトタイプを導入し、顧客の意見を積極的に取り入れながら改良する方法で開発を進め、現場の担当者にとって使い勝手の良いシステムを作り上げた。
AIやRPAなど最新技術の活用によってPV業務の自動化や効率化を実現した。有害事象症例を取り込んで管理し、規制当局に報告するまでの一連の業務を円滑に行える。
同社日本法人執行役員の長澤浩氏は「業務を自動化するといってもまだ開発段階だったり、コンセプトのみだったりするシステムが少なくない中、当社は、実際に実務で活用できる自動化のソリューションを提供できる。業界の中でも業務自動化の取り組みは先んじている」と話す。
従来のシステムに比べて各業務に費やす時間を大幅に削減できるため、30%以上の業務効率化につながる。CROに業務を委託する費用を減らせたり、浮いた自社のマンパワーをリスクマネジメント強化に振り向けられるなど、導入によって様々な効果が見込めるという。
PV部門の各業務で自動化や効率化が可能だ。MRの有害事象症例の報告はスマートフォンや携帯端末、パソコン上の専用アプリで行える。MRの入力段階で同時に、必要な項目が入力されているか、入力内容に誤りはないかなどのエラーチェックを自動的に実施し、第一報の症例報告の正確性を高める。
既存システムと連携してWordやPDF等のフォーマットで症例報告を受け付ける場合でも、記載された内容がどの項目に該当するのかを予め学習させておけば、症例報告から各項目のデータを自動的に抽出することが可能だ。
報告があった中から類似症例を自動的に識別する機能もある。同じ有害事象症例が重なって報告されていれば、容易にチェックできる。
妊婦の患者などMRへの再調査依頼が必要な時には、事前にルールを設定しておけば、システムが自動的にMRに連絡を入れて再調査を依頼する。MRが再調査を行い入力した情報はすぐに反映されるほか、医師にハイパーリンクを送信し入力してもらうことも可能だ。
このほか、症例報告の記載内容がMedDRAなどの医学辞書に沿った表記になっているのかを自動的にチェックしてコーディングする機能や、文献やコールセンターのログなど非構造化データを自動的に分析して必要な情報を抽出し、症例データにする機能もある。
様々な機能は規制の変化にも対応して進化し続けるため、ユーザーは常に最新の機能を使えることも特徴だ。
「ユーザー側が意識しなくても機能がどんどん高まっていくイメージ。既存のシステムのように、規制の変化に応じて高額な費用を投じてシステムをバージョンアップする必要はない」と長澤氏は語る。
アリスグローバル (LifeSphere MultiVigilance 10)
https://www.arisglobal.com/jp/