厚生労働省は「ワクチンの研究開発、供給体制のあり方に関する検討会」の審議を踏まえ、ワクチン産業ビジョン案を作成、8月28日までパブリックコメントを募集している。ビジョン案では、ワクチンを国内で開発・安定供給することが、感染症や良質な医療提供のために不可欠とし、国が一定の関与を行い、国内ワクチン産業を育成する必要性を訴えている。ビジョンは今月中にまとめる予定。
ビジョン案では、ワクチンは危機管理的な社会需要の増大や、少子化による市場性が縮小する中でも、良質な小児医療の維持・向上には不可欠であることを再確認した上で、国の関与の下、将来にわたり日本で必要なワクチンを開発し、安定的に供給できる体制確保の必要性を指摘した。
また、今後のワクチン需要の展望としては、[1]危機管理へ対応する手段としての新型インフルエンザワクチン[2]欧米で使用されている新しいワクチンの臨床現場への導入:不活化ポリオワクチン、インフルエンザb型菌(Hib)ワクチン、ロタウイルスワクチンなど[3]成人、高齢者領域でのワクチン:ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン、帯状疱疹ワクチンなど[4]改良し有用の向上:経鼻インフルエンザワクチンなど――等を期待される領域として挙げている。
これらの社会ニーズに応えていくための国内産業の課題として、基礎研究から臨床研究への橋渡しを通じて、実用化が円滑に進むように、国内のトランスレーショナルリサーチ体制の整備が必要としている。さらに、日本のワクチン産業は小規模企業が多いという特徴があるが、市場の将来性を見通し、新製品開発に戦略的投資ができる体力ある産業へ、構造転換を図っていく必要性を示した。
そうした産業像を具体化していくために、アクションプランも提示。アクションプランは、[1]政府の取り組み・方向性[2]基礎研究から実用化(臨床開発)への橋渡し促進[3]産業界における体制の目指すべき方向[4]機器管理上も必要なワクチン等の研究開発・生産に対する支援[5]薬事制度等の取り組み[6]需給安定化の取り組み[7]情報提供・啓発の推進――について方向を取りまとめた。