消費者向けの効能など整備
6月から施行される薬事制度の改革では、医薬品のネット販売などに関心が集まっているが、これまで制度を運用してきた中で、不透明と指摘されてきた部分の見直しも、粛々と進められている。その一つが、医療用医薬品と一般用医薬品の“どっちつかず”という性格を持つ「水陸両用医薬品」の整理だ。水陸両用薬として残されていた41品目について、効能効果や用法用量の記載を一般用にふさわしい表現に整備し、昨年秋に開かれた薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会の了承を得た上で、一部変更承認が行われた。ただし今回の一変承認では、引き続き水陸両用で用いられる11品目に関して、販売名を区別するなどの措置はとっておらず、3年以内に改めて見直すことになっている。
改正薬事法に伴う緊急措置
医療用薬と一般用薬の区分がなされたのは、1967年10月1日から実施された製造承認に関する基本方針である。水陸両用医薬品とは、基本方針以前に承認された医薬品で、薬価基準に収載され、医療用薬として用いられながら、承認書の備考欄に「一般用」の記載がないため、薬局でも一般向けに販売されてきたものを指す。効能効果や用法用量は、医師や薬剤師など医療関係者向けの表現で記載されている。
2005年4月の改正薬事法施行により、水陸両用薬の多くは処方せん医薬品に指定され、医療用薬として取り扱われることが明確化された。しかし一部は処方せん薬の指定要件から外れ、それらが水陸両用薬として残された。6月に施行される改正薬事法では、水陸両用薬は「薬局医薬品」のカテゴリーに含まれるため、薬局は引き続き販売することが可能だが、効能等を整備しない限り、店舗販売業は販売できなくなる。
そこで厚生労働省医薬食品局審査管理課は、効能効果や用法用量等の表現を、一般用薬として適切なものに変更するため、昨年8月1日付で通知を発出した。通知では、[1]過去3年間に、一般薬として製造販売された実績がある[2]基本方針以前に承認された医薬品等で、承認書の備考欄に一般用と記載されていない[3]医薬部外品に該当しない――医薬品について、「一般の人が自ら判断できる症状、用法」「既承認医薬品の効能効果等の範囲」という考え方に基づき、効能効果や用法用量を一般薬にふさわしい内容に整備するとし、企業に一部変更承認を申請するよう求めた。
水陸両用薬のうち、▽今後は一般用薬としてのみ販売するものは、一般用薬として効能効果等の一変を申請する▽引き続き一般用薬だけでなく、医療用薬としても製造販売するものは、医療用薬の効能効果等に加え、一般用薬としての効能効果も追記する一変申請を行う――こととした。
一部変更申請41品目を承認
この結果、全部で41品目の申請がなされた。内訳は、引き続き水陸両用で製造販売するものが11品目であり、残り30品目は一般用薬として申請された。製剤別では、漢方・生薬製剤が19品目、皮膚外用剤が16品目(うち抗生物質+ステロイドが6品目、抗生物質が4品目)、その他が6品目となっている。
企業からの申請を踏まえ、法改正に伴う緊急的な措置であるということを前提に、既承認の内容を読み替えて一般用薬にはない表現の削除、服用時間の追加などを行い、効能効果等も専門家の意見を聞きながら、既存の一般用薬で用いられている範囲内で、変更案が作成された。効能効果等の見直し案は、昨年11月29日の薬食審一般薬部会で了承され、その後に41品目の一部変更承認が行われた。
41品目のうち、引き続き医療用と一般用が併用される11品目については、3年以内に医療用と一般用の承認書を分け、改めて販売名、規格、試験法などを整備するなど、本格的見直しが行われることになっている。
水陸両用薬が6月から、店舗販売業でいきなり販売が禁止されれば、現場が混乱することは避けられない。今回の措置は、これまで一般用医薬品として流通し、安全性等の面でも特段の問題が生じていないことを踏まえ、生活者が困ることがないようにという視点から、行政、メーカー、販売関係者らが知恵を出し合った結果である。改正薬事法の施行に伴う緊急措置ではあるが、これまで不透明と指摘されてきた水陸両用薬が、40年余を経て解決のメドが立った意義は大きい。