小野薬品は11日、英ベンチャーのゼンションリミテッドと、イオンチャネルに関する創薬について提携契約を締結した。生体内に数多く存在するイオンチャネルの中から、疾患との関わりが強いと見られる数種類のイオンチャネルを小野薬品が指定。それを制御する働きを持つ低分子医薬品候補化合物をゼンションが創製する。対象領域、契約金額は公開していない。
小野薬品は、契約一時金を支払うほか、今後2年間をメドにゼンションに研究資金を投入する。さらに研究開発の各段階に応じた成功報酬、上市後の売上高に応じたロイヤリティを支払う。その代わりに、創製された化合物を世界的に開発、販売する権利を持つ。
小野薬品は、生理活性脂質作動薬、酵素阻害剤という重点研究領域のほかに、チャレンジ領域を設定している。その一つが、今回の提携領域でもあるイオンチャネルやトランスポーターなどを標的とした膜輸送制御薬だ。
イオンチャネルは、細胞の内外へイオンを通過させる膜蛋白質。全ての細胞の機能を調整しており、循環器疾患、神経疾患、泌尿器疾患、代謝性疾患、炎症性疾患など各種疾患に関与。創薬標的として注目を集めている。
小野薬品は、これまでの研究によって、ある種のイオンチャネルが、ある種の病態に対して一定の役割を果たしていることを把握。その成果をもとに画期的なイオンチャネル制御剤を創製するため、この分野で高い創薬技術を持つゼンションと提携を締結したという。
ゼンションは、イオンチャネル制御剤について3つの画期的な新薬候補化合物の臨床試験を実施している。同社にとっても今回の契約は、研究資金の獲得などでメリットがある。
製薬業界では近年、新薬のタネとなるパイプラインの世界的な不足を背景に、臨床開発段階の候補化合物を導入、導出するという従来の提携だけでなく、今回のように研究の川上部分で提携するケースが増えている。