「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」は、薬害再発防止策の「第一次提言」を大筋でまとめた。医薬品行政組織のあり方では、医薬品の承認審査、安全対策などの業務を監視・評価する第三者機関を新たに設置し、調査や勧告の権限を持たせることなどを盛り込んだ。第三者機関の詳細は、今後検討する。また、昨年の「中間とりまとめ」で示されて以来、積み残しとなっている▽医薬品医療機器総合機構(PMDA)の業務を厚生労働省医薬食品局に統合(別組織もあり得る)▽医薬食品局の業務をPMDAに統合――などの行政組織の見直し案についても、今年度から集中的に議論する。
第一次提言では、昨年7月の委員会の「中間とりまとめ」を受け、今年度から、PMDAの安全対策人員を100人増やし、遺伝子多型の探索調査、レセプトデータなどの薬剤疫学への活用方策調査、リスク最小化管理方策の導入検討、医療現場での安全性情報の提供・活用状況調査などの事業を行うことを説明。こうした安全対策の実施状況を踏まえ、医薬品審査業務の一元化については「厚労省とPMDAの一元的な組織体制も視野に、引き続き医薬品行政のあるべき組織形態を検討していく」とするにとどめ、具体的な組織の見直しは4月以降に議論する。
医薬品行政を評価する機能のあり方についても言及。現在、厚労省とPMDAが行っている医薬品の承認審査や安全対策などの業務は、独立行政法人評価委員会やPMDA運営評議会で監視・評価しているが、医薬品行政の個々の措置を調査・評価し、必要な勧告を行う権限は与えられていない。そのため第一次提言では、調査・勧告の権限を持った第三者機関が評価すべきとした。
医薬品の適応外使用については、「安全性と有効性に係るエビデンスに基づき、患者の同意のもとで、真に患者の利益が確保される範囲において実施されるべき」とした。また、不適切な適応外使用が薬害を引き起こしたとする観点からも、「個々の医師のみの判断により実施されるのではなく、個々の医療現場において、医療機関、学会などにおける客観的で適正な判断に基づき実施されるべきもの」と明記した。
ただ、国内外の学会が作成したガイドラインがあるものなど、一定のエビデンスや使用経験を有する適応外使用については、「より柔軟な対応をすべき」とした。
適応外使用は、薬事法上の効能効果の取得により解消されるものであるため、「まずは、その医薬品の承認を有する製薬企業がエビデンスの収集および承認申請のために努力を行うべき」とする一方で、国、学会レベルで関係者が協力し、医師主導治験などを活用したエビデンスの収集を行うなどといった対応についても「必要な支援がなされるべき」ともした。
また、添付文書の効能効果(適応症)については、「治験その他の安全性と有効性に係るエビデンスから科学的に許容される範囲で設定されるべきもの」と明記した。過去にその不明確さが科学的根拠のない使用を誘発して薬害を引き起こしたとされる観点からも「効能効果の範囲は明確に記載すべき」とした。