全日本病院協会は9日、2006年度病院経営調査報告をとりまとめ、公表した。それによると、4月の診療報酬改定の影響を受け、全体の収支率は悪化している一方で、2年連続回答した病院の収支率は若干改善しており、病院間の収支率の格差が大きくなっていることが推測できる結果となった。また、地域別では東京の収支率が極端に悪化していることが分かった。全日病では、7月から療養病床に対する新たな診療報酬体系の導入されたなどの影響で、民間病院経営が危機的状況にあると訴えている。
この調査は、毎年定期的に5月の病院収支状況を調査しているもので、今年も500病院を無作為に抽出・調査したもの。回答率は45.2%(回答病院数226病院)で、うちDPC対象病院は21病院であった。
病院の収支をみると、医業収支率は103.7%(前年104.4%)、総収支率が103.7%(104.1%)でいずれも悪化していた。特に東京に限ってみると、医業収支率で98.3%(101.0%)、総収支率で98.1%(101.2%)であり、昨年度より大きく悪化していることが明らかとなった。また、赤字病院が全体の30%を占めているほか、東京に限ると65%が赤字となるなど、経営環境の悪化している状況が鮮明となっている。
病床別でみると、総収支率は一般病床のみが102.7%、療養病床のみが108.6%で、療養病床の方が経営状況がよかった。しかし、7月以降は減額改定がなされているため、収入減は必至の状況だと全日病ではみている。
病床数別の総収支率は200床以上が102.6%、199床以下が105.0%と小規模病院の方が数字がよく、DPC導入に関しては、対象病院が101.6%で、非対象病院の104.5%と比べると、3ポイント程度収支率が悪化していた。
05年と06年と連続回答した170病院を比較したデータでは、病床数はやや増加しているが、病床利用率が低下し、1日当たりの入院患者数は変化していない。また、医業収支率は103.6%から104.1%に改善するなどしていた。このことから、全日病では病院間による収支率格差が大きくなっていると推測できると分析している。
また、今回の調査では東京の収支率悪化が大きくクローズアップされた。これについては、診療報酬改定、看護基準の変更等による人員不足が要因になっており、社会の好景気による相対的な人件費増が大きく関与しているのではないかと全日病ではみている。
今回はさほど影響がみられなかったが、7月からは療養病床の診療報酬および制度改定が行われており、全日病では今後、収支の悪化が見込まれるとし、さらに10月の精神病床における看護基準経過措置終了により、精神病床の収支率悪化が懸念されるとしたすると共に、「診療報酬の減額改定は東京を中心に、民間病院の存続が難しくなることが今回の調査から示唆される」と分析している。