推定国内シェアは43%
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医療機器の旭化成メディカルとクラレメディカルは14日、両社の人工腎臓(ダイアライザー)などからなる透析事業と病因物質を取り除く血液浄化事業を明年10月1日をメドに統合することで基本合意したと発表した。透析患者が増える一方で、国の医療費抑制策で事業拡大が難しいことから、事業統合することで開発力向上や製品ラインアップの拡充などを図り、国際競争力を強化したい考え。海外事業では、2015年には現在2割強の海外売り上げ比率を50%に引き上げる計画だ。
クラレ側の当該事業を分割して旭化成側に統合する形で「旭化成クラレメディカル」(本社・東京都千代田区)を発足させる。資本金は未定だが、出資比率は旭化成ファーマ85%、クラレメディカル15%。社長は旭化成メディカルから選出する予定。事業規模は400億円程度で、10年度には500億円が目標。推定国内シェアは43%で、2位以下をさらに引き離した。今後、公正取引委員会と協議し、詳細を詰めることにしている。
両社は6月、宮崎県延岡市に人工腎臓で血液を濾過する医療用中空糸膜を製造する合弁会社を設立しているが、当時から両社とも事業統合の必要があるとの認識で一致していた。
背景には、医療費抑制策で事業拡大が難しいという状況がある。両社とも製品面では補完関係にある一方で、人工腎臓に対する開発力は強化でき、課題の国際競争力も高められると判断。その後協議を進め、13日に事業統合のための基本契約を締結した。旭化成側が持つ世界シェア2位(ダイアライザー市場)を、統合で確実なものにしたい考えだ。
この事業での主力製品は、旭化成側は、世界標準で高性能膜のポリスルホン(商品名「APS」)中空糸膜。クラレ側は透析導入初期に用いるEVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体、商品名「エバール」)中空糸膜。統合することで製品の幅が広がり、今後、糖尿病に由来した腎疾患など様々な病態に応じた製品の提供が可能になるとしている。
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両社は14日都内で会見を開き、統合理由について旭化成メディカルの吉田安幸社長は、「患者は増えるが、透析業界は楽観できず、シビアなサバイバル競争になる。その中では単独より互いの強みを持ちよって、協働ワークを行う必要があった」と説明。クラレメディカルの堀井秀夫社長は、「医療費抑制策の中で、今のシェアでは勝ち残りは難しいと判断した。(評価の高い)エバールをなんとしても残したかった」と語った。
なお、旭化成メディカルの輸血用白血球除去フィルターやウイルス除去フィルターの事業は、新たな会社を設立して移行する。クラレメディカルの歯科材料事業は引き続き同社が行う。