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【11年回顧と展望】薬剤師の存在感が一層増す‐日本薬剤師会‐

2011年12月28日 (水)

日本薬剤師会副会長 山本 信夫

 2011年を振り返ってみると、多くの人々が意識はしているものの、これまであまり実感として感じることのなかったほどの大きさで、自然の力の恐ろしさを再確認させられた年だったと思う。

 若人の多くは、4月から始まる新しい生活に向けて期待と希望に胸を躍らせながらその準備に勤しみ、雪に閉ざされた地域では、春の訪れを心待ちにしていた、まさにその瞬間、千年に一度といわれる巨大地震と想定を超えた大津波が、岩手・宮城・福島各県の沿岸地域を襲い、人々から一瞬にしてそれまでの平穏な生活を奪い去り、町や村は灰燼のごとく破壊されてしまい、3月11日は被災された方々ばかりでなく、日本人にとって決して生涯忘れられない日となってしまった。

 地震と津波に襲われた地域では、1万5842人もの尊い命が奪われ、住まう場所を失うなど多くの被災された方々が、まだ寒さの厳しい中で、避難所や救護所で不自由な避難生活を余議なくされ、日々の生活と共に適切な医療提供が十分に受けられない環境に置かれていた。

 日本薬剤師会では16年前の阪神淡路大震災の経験を踏まえて、震災翌日の12日には災害対策本部を立ち上げて、被災地の医薬品供給体制を確保し、医薬品の適正使用が保たれるよう、被災地を支援する薬剤師の派遣を全国から募り、支援活動が終了するまでの間、延べ9000人近い薬剤師が、生活インフラも十分でない被災地で、地域の住民の方々への適切な医薬品の供給のための活動に従事した。

 その中には、自らが被災者となった薬剤師も含まれており、薬剤師が医療に欠かせない存在であることを、日本国中に知らしめる結果となった。

 一方、国を挙げての支援体制が整い、被災地で復興の槌音が聞こえ始めたころ、少子高齢社会にあるわが国では、社会保障制度の将来を見据えた政府の方針が示された。

 戦後のベビー・ブーム世代が75歳となる2025年を見据えて、わが国が世界に誇る「皆保険制度」を将来にわたって維持・運営するためには、どのような対策が必要かということをテーマに、「社会保障・税一体改革成案」として示された改革のロードマップに従って、政府では様々な施策を講ずるためのいくつもの検討会が開催されると共に、12年度の医療・介護同時改定を見据えた議論も同時に進められた。

 こうした議論の経過の中で、薬剤師に対して大きな期待が寄せられている。これまで、医療現場ではあまり目立たぬ存在であった「薬剤師」が、安全・安心な医療を提供するためには、医師を中心に医療の専門職が相互に連携・補完することが必要で、いわゆる「チーム医療」の一員として医療機関・地域を問わず、医療提供体制の確保には、薬剤師が不可欠な存在と認識されたことは特筆すべきことと思う。

 国民の健康を守るためには、医療提供体制の充実と共に、専門家の対面による情報提供を通じた、安心で安全な一般用医薬品の適切な販売体制の構築も、セルフメディケーションの普及という観点から重要なことと思う。

 しかし、インターネットを利用して利便性のみを追求し、適切な情報提供には欠かせない対面での医薬品販売を否定する規制緩和の動きは、なお収まらず、今後に課題を残すこととなった。

 医療に欠くことのできない医薬品を適切に提供し、その適正使用を確保することを期待されている薬剤師にとって、新たな年は飛躍の年と言ってもよいと思う。

 明年4月には、長年の夢であった6年制薬剤師養成教育の課程を修了した新たな薬剤師が社会に巣立ってくる。4年制教育では経験できなかった、臨床現場での実務経験を卒業前に体験した新たな薬剤師には、多くの期待が寄せられており、活躍の場も業務の幅も、これまで以上に広く大きくなってくるものと思われる。

 現在、第一線で働く4年制の薬剤師と、新たな教育課程を修めた薬剤師とが相互に連携しながら、医療における薬剤師の役割のさらなる向上に貢献するものと思う。

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