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【11年回顧と展望】大変な年の2つの卸大変‐日本医薬品卸業連合会‐

2011年12月28日 (水)

日本医薬品卸業連合会専務理事 羽入 直方

 2011年は大変な年になった。医薬品卸業界は二つの大変に襲われた。

 一つ目の大変は3月11日の東日本大震災である。午後2時46分、マグニチュード9・0の大地震が宮城県沖で発生し、時を置かず襲来した大津波が三陸海岸を呑みこんだ。福島原発が耐えきれず破壊され、原子炉のメルトダウンを招来した。

 このような未曽有の災害の中で医薬品卸は、医薬品の供給に支障が生じないよう懸命な活動を展開した。家が流され、被災者として避難所で生活しながら営業所に出勤し、寸断された道路を伝い、不足するガソリンを懸念しつつ、医薬品を医療現場まで届けることに力を注いだ。

 医薬品不足を恐れるあまり大量発注する中核病院には、膝詰めで医薬品の在庫情報を的確に提供し、適正量の注文に抑えてもらうことにより、医薬品流通の混乱を防いだ。国民医療の基盤を支える医薬品卸の機能が発揮され、その社会的使命を果たし得たことは、医薬品卸関係者のひそかな誇りである。

 また、今回の経験を踏まえて薬卸連は、阪神大震災の後に作成した災害対策マニュアルガイドラインの改訂を行った。メーカー・行政との連携を一層深める必要性もあり、医薬品流通の危機管理体制の充実を企図している。

 二つ目の大変は、夏に明らかになった。2010年度の医薬品卸企業決算数値である。過去最悪となった08年度営業利益率0・29%は、翌09年度に若干持ち直したが、10年度は記録更新の0・13%に転落した。

 自由主義経済の中の私企業は、単なる利益追求の存在ではなく、社会発展の担い手である。適正な利潤は社会システム改善のための必要原資であることは累言を要しない。ましてや医薬品卸は公的医療保険制度に組み込まれ、国民医療の基盤を支えている。

 全国津々浦々の22万カ所の医療機関・薬局に医薬品を届け、品質不良品・副作用情報を回収する毛細血管型の事業展開をしており、その機能の充実のためには、IT化投資・災害対策投資などが求められている。このような社会的要請に応えられなければ、その存在価値を失いかねない。

 医薬品卸の惨憺たる決算の一因は、新薬創出等加算制度の導入によるものである。10年度は新制度の対象となる新薬の値引率が抑制された反面、総価取引の論理により、これまで営業利益の確保に貢献していた長期収載品の価格が大幅に低下したからである。

 新制度が新薬の創出を促進し、かつ、ドラッグラグを解消するための制度として有効であると評価される以上、新制度の継続を前提とする経営環境の整備と営業方法の改善に努めなければならない。

 打開策は、07年の流通改善懇談会緊急提言の実現、即ち流通改革の実行である。市場実勢価格に応じた仕切価の設定(売差マイナスの解消)+合理的な価格交渉期間(未妥結仮納入の解消)+価値に見合った市場価格の形成(総価取引の是正)=適正利潤の確保という等式を確立し、経済合理性に貫かれた医薬品市場を作り上げていくことである。

 総価取引を是正し、単品単価取引による銘柄間競争を通じ、価値に見合った市場実勢価格の形成を進めることが薬価基準制度の趣旨に叶うものであり、かつ新制度の前提である。総価取引による銘柄内競争は、卸間の非合理的体力勝負であり、卸疲弊への道程である。

 流通改革の動きは停滞しているとの指摘があるが、卸一人の頑張りには限界がある。大幅な売差マイナスは、建値制本来の趣旨を逸脱していることを卸・メーカーとも改めて認識しなければならない。

 総価取引の是正には大規模ユーザーの購買姿勢がネックとなっており、早期妥結のためには価格交渉当事者双方に妥結に向けての同水準のベクトルが必要である。また、国の役割として、公的医療保険制度の経営責任を踏まえ、薬価基準制度の適正運営の観点からの行政対応を望みたい。

 品質不良医薬品の迅速な回収のためには、トレーサビリティの確保が重要課題である。流通改善懇談会の意向を踏まえ、商品コード、製造番号および有効期限のバーコード表示の問題に取り組むため、メーカー・卸のプロジェクトチームが発足した。

 一朝ことが起こり、不良品回収が遅れれば、メーカーは巨額な損害賠償責任を負いかねない。医薬品流通の安全性確保の観点から、メーカー・卸とも待ったなしで対応しなくてはならない。

 9月にソウルで、医薬品卸による日韓医薬品流通フォーラムが開かれた。隔年に日本と韓国で交互に開かれている。

 韓国は日本をモデルにした公的医療保険制度を擁しているが、随所に独自の工夫を織り込んでいる。使用薬剤の実購入価償還制度が顕著な一例である。薬価差益を生まない理想的なシステムに見えるが、制度のマイナス面が問題となっている。

 日本ならば薬価と市場実勢価との間で薬価差益が発生するが、実購入価償還制度の韓国では、実購入価を薬価近似価格に操作して薬価差益に相当する違法な裏リベートが生まれているという。薬価が高止まりし、医療費に占める薬剤費比率がOECD水準を大きく超え、韓国政府は、来年度に薬価の大幅引き下げを行うことを決定した。

 韓国の医薬品卸は小規模多数の乱立状態にある。フォーラムでは、日本の卸が来た道を辿り、合併再編のうねりが近づいているという声に接した。

 薬卸連は、今年創立70周年の古希を迎えた。公益法人制度の改正に伴い、再来年に新法人としてスタートすることを目指している。年が明ける。まずは、71年目の確実な第一歩を踏み締めたい。




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