日本OTC医薬品協会顧問 西沢 元仁

2011年は、3月の東日本大震災と、その後の原子力発電所事故への対応と復旧への取り組みが、大きな課題として記憶される年となろう。
折しも世界セルフメディケーション協会(WSMI)の理事会出席のために米国出張中であったが、再開された国際便で帰国後、直ちに被災地支援への取り組みに協会を挙げて対応した。様々なチャンネルでの取り組みがあったために、相当の混乱も生じたことは大きな反省点であり、関係団体と共に将来への備えを進めることが求められている。
大震災の余波が消えない中で、5月には定時総会を開催し、任期を満了した三輪前会長から吉野会長への交代がつつがなく実施された。恒例の懇親会や、昨年から開始された総会イベントもすべて自粛する中で、震災救援対応と共に、着実なOTC市場発展を通じたセルフメディケーション推進を目指すことが総意として示された。
一方、政権交代後の民主党への働きかけ等を通じて、一般用医薬品関係の諸団体が一丸となって取り組むことの重要性が一段と認識され、三輪前会長の熱心な取り組みが実る形で、日本一般用医薬品連合会(略称:一般薬連)が7月に発足することができた。
この組織は、セルフメディケーションの振興をキーワードとして、OTC医薬品の製造販売事業者5団体が結集したものである。
全国家庭薬協会、全国配置薬協会、日本医薬品直販メーカー協議会、日本漢方生薬製剤協会、および日本OTC医薬品協会により結成されたものであり、初代の会長には上原明氏(大正製薬株式会社会長兼社長)が、副会長には三輪芳弘氏(興和株式会社社長)が選任された。
医薬品製造販売業者および製造業者団体の全国組織としては、日本製薬団体連合会(日薬連)が既に存在しているが、一般用医薬品連合会はOTC医薬品製造販売業者の総意を発信するものとして、日薬連と連携し、その協力を得ながら、独自の組織として活動するものである。
そのような活動の例として、既に税制要望として既存の医療費控除とは別にセルフメディケーションに支出した費用(OTC医薬品購入費)について控除対象とするよう要望書を提出し、さらに、セルフメディケーション振興に向けた五つの提言を政府ならびに与党に提出するなどを行っている。
日本OTC医薬品協会は、連合会の枢軸を占めるものとして引き続き加盟諸組織と連携し、その活動の推進を図ることとしている。
連合会の活動の一環として、年末には99年以来の全面見直しとなった一般用医薬品の使用上の注意ならびに添付文書記載要領にかかる説明会を、東京、大阪および富山で開催した。
基本的な事項、内容は既に99年の改正で実現されたものを踏襲したが、先の販売制度改正に際して求められたものを反映し、併せて様々な薬効群や、製品群における文言の相違や、医療用医薬品における使用上の注意改訂の反映等を総点検したものであり、今後数年をかけて新たな表記への変更が図られることとなる。法定表示事項の改正のように、旧表示品の販売が禁ぜられるものではないので、先入先出の順守で整然とした対処をお願いしたい。
一般用医薬品については、薬効群ごとに承認基準の整備が進められてきたが、様々な事情からその制定が途絶えていた。そして今年、久方ぶりに外用消炎鎮痒剤の承認基準が整備された。また、指定医薬部外品の効能等の見直しが実施された。
これらの対応により、承認手続きの簡素合理化が図られたところであり、今後さらに承認基準の整備により、手続きの簡素合理化が進むことを期待する。
また、先の販売制度改正に際し実施された一般用医薬品の規制区分は、主として成分に着目して実施されたことから、より詳細な検討を行うべきとの意見が専門家の間にもあった。今般、生薬成分を対象に見直しが図られ、生薬成分についてその配合量に応じた区分の是正が行われた。
その結果、生薬のみからなるものばかりではなく、洋薬成分を配合するものを含め、多数の一般用医薬品について、その規制区分が変更されるものが生じた。これらについては既に告示等により明らかにされたが、実施については原則として来年4月からとされた。なお、漢方製剤については、引き続き一括して第2類医薬品とされている。
さて、一昨年11月に発足したアジア太平洋セルフメディケーション協会は、本年5月に第1回理事会を開催することとしていたが、3月の東日本大震災により、開催延期となっていた。10月に大阪で開催され、5月に予定されていた諸事案の審議が行われると共に、第1回地域総会を12年秋に韓国ソウル市で開催することが提案承認された。
また、11月には第6回中日医薬産業交流会が北京で開催されたのに合わせ、第3回日中ハイレベル会合が実施され、両協会がWSMI、APSMIの活動を共同して支援すると共に、日中の企業交流を推進することが確認された。