広告審査業務を効率化するAIエージェント
株式会社EdgeXは、景品表示法(景表法)・薬機法などに関わる広告審査業務を支援するAIエージェント「ヤッキくん」を提供している。広告表現に対し、各種ガイドライン、エビデンス情報、社内ルールなどに基づいたチェックと改善提案を行い、業務の効率化と品質向上の両立を目指す。キューサイ株式会社では現在、「ヤッキくん」の本格活用に向け、PoC(概念実証)検証および個社向けカスタマイズ開発を進めており、健康食品・スキンケア領域における広告審査DXの取り組みとして注目される。
広告審査業務の高度化ニーズに対応
近年、通信販売を主力チャネルとする企業では、EC・Web広告の拡大に伴い、テレビCM、Web広告、LP(ランディングページ)、同梱物など、審査対象となる広告資材の件数が増加している。加えて、景表法や特定商取引法の改正・厳格化、薬機法対応などにより、1件あたりの審査にはより高度な専門知識と慎重な判断が求められるようになっている。
キューサイは、「ケール青汁」「ひざサポートコラーゲン」をはじめとする健康食品、機能性表示食品、さらに「コラリッチ」ブランドに代表されるスキンケア商品まで幅広い製品カテゴリを展開している。機能性表示食品では届出資料に基づくエビデンスとの整合性確認、スキンケア商品では薬機法や各種ガイドラインに基づく表現確認が必要となるなど、商品カテゴリごとに異なる専門的な審査基準への対応が求められる。このため、広告審査業務が一部の専門担当者に集中しやすく、知識の属人化も課題となっていた。
EdgeXはこうした課題に対し、生成AI技術を活用した「ヤッキくん」を展開する。業務用チャットを通じて担当者が広告案や資材案を送信すると、AIが関連するガイドラインや製品情報を参照し、コンプライアンスレビューを支援する。各社の運用に応じた確認業務の標準化や効率化を支える点が特徴だ。
「ヤッキくん」の特徴
「ヤッキくん」は、各種ガイドラインやエビデンス情報、社内ルールなどを参照し、広告・資材の表現内容をAIがチェック・改善提案するエージェントだ。
WEBプラットフォーム上で担当者が資材案や広告案を送信すると、AIが関連するガイドラインや製品情報をもとにコンプライアンスレビューを支援します。EdgeXのガイドライン解釈実務ナレッジ、「知識構造メソッド(特許出願申請中)」によるAI活用技術により、正確かつ実用的なフィードバックを提供します。
※「ヤッキくん」は資材案に関する法律的見解を示すものではなく、学習用データである各種ガイドライン、エビデンス情報、自社ルールなどとの乖離を自動的にチェックするツール。最終的な法的判断などについては、弁護士への相談が必要となる。
さらに、企業が保有するエビデンス情報や社内ルールを「ヤッキくん」に追加学習させることで、ナレッジとして蓄積され、次回以降のチェックに反映される。こうしたナレッジの循環により、継続的な精度向上と業務効率化が可能になる。
主な特徴は以下の通り。
キューサイが本格活用に向けてPoCを推進
キューサイでは、DX推進の一環として、生成AIを活用した広告審査AIエージェント「ヤッキくん」の本格活用に向けた取り組みを開始した。現在は、法務・考査部門が主体的にPoCに参画し、EdgeXと連携しながら検証と改善を進めている。
今回の取り組みにより、景表法・薬機法・社内ルールに基づく確認業務の効率化、表現チェック品質の平準化と再現性の向上、制作初期段階での確認強化による手戻り削減、担当者の知見や判断観点の蓄積・共有による属人化リスクの低減などが期待されている。あわせて、コンプライアンスの徹底とプロモーション活動の高度化を両立し、商品・ブランド価値を損なわない適切なコミュニケーション体制の強化も見込む。
現場で高まる期待、活用拡大へ
キューサイ株式会社 法務・考査部長の鼻﨑貴則氏は、広告審査業務が担当者の経験や知見に依存しやすく、商品ごとの社内レギュレーション整備や社内・協力会社への浸透にも難しさがあったと説明する。マルチプロダクト・マルチチャネル化で審査対象が急増する中、品質を維持しながら迅速に対応するにはAI活用が必要不可欠だったという。専門性の高い領域だけに当初は実用化に半信半疑な面もあったが、「ヤッキくん」のトライアルを通じて、画像認識や判定精度の高さに可能性を感じたとし、商品ごとに必要な確認項目や判断観点を自社で追加学習できる点を評価している。
同社法務・考査部の河地悦子氏は、広告審査では法的リスク回避に向けた的確な指摘が求められる一方、制作担当者にとっては手間や時間を抑えたい工程でもあると指摘する。判断のブレや想定外の指摘による審査工数の増加は、制作工程全体への影響にもつながりかねない課題だという。AI活用を検討していた際に「ヤッキくん」のリリースを知って問い合わせたことが今回のきっかけで、現在は商品種別ごとのテスト検証を進めている。一般化粧品の初動チェックには実用化に向けた手応えがあり、今後は制作現場でのテストも進め、制作担当者が気軽に相談できるパートナーとしての活用を目指す考えだ。
EdgeX ヤッキくんPdM(プロダクトマネージャー)の益川氏は、健康食品からスキンケアまで幅広い製品を展開するキューサイが、本格活用に向けた取り組みを開始したことに期待を示す。健康食品における景表法対応と、スキンケアにおける薬機法対応という異なる法規制を横断して支援する点は技術的にも大きなチャレンジだが、継続的な機能改善を通じて、キューサイの事業成長と業務変革を支援していく考えだ。
EdgeXは「ヤッキくん」を通じ、法規制遵守の複雑化と人材不足という業界課題に向き合い、企業の持続的成長と消費者保護の両立を支援していく考えだ。




















