2009年6月の改正薬事法施行で、「臨床検査センター」が医薬品卸から購入できなくなる可能性のあった消毒薬や精製水、生理食塩水などが入手できるようになった。厚生労働省が都道府県などに通知した薬事法施行通知の一部改正で、検査を行うに当たって必要な医薬品として「滅菌消毒用医薬品」、試験検査に使用される「標準品等」が追記された。精製水、生理食塩水は「標準品等」に該当する。
消毒薬は、手指消毒や飛散した血液や体液の処理にも用いられ、精製水は検査試薬の希釈、生理食塩水は血液や尿などの検体希釈に使用される。一日に膨大な数の検体を処理する臨床検査センターでは、これらの医薬品が大量に消費されるため、主に薬卸から大量に一括購入していた。
しかし、改正薬事法では、卸売業者による医薬品の販売先が、病院や診療所をはじめ、薬局、医薬品の製造販売業者などに限定され、販売可能な医薬品の種類も一律に規定された。消毒薬や精製水などは、薬卸が臨床検査センターに販売できる品目から外れてしまった。
法律施行前に都道府県の販売先変更許可を取得・更新した薬卸は、最長で約6年間“みなし卸売販売業”として、従来通りの販売が行える措置が設けられているが、関係者は「経過措置が切れたら、薬局から買うことになるのか」などと、困惑していた。
厚労省の3月31日付通知内容を補足する事務連絡では、薬卸が病院や薬局以外の相手先に医薬品を販売できるケースを、「業務上大量に使用する必要が認められる等で薬局からの購入が困難であるなど、卸売販売業者からの販売等に相応の正当性が認められる場合」と明記。
薬卸から臨床検査センターへの販売の正当性が認められる事例として、▽検査を適正に実施するため、業務上大量に必要な滅菌消毒用医薬品の販売▽検査に必要な精製水、注射用水、生理食塩水、ヨードチンキ等の販売--を挙げている。
全国の臨床検査センターが加盟する日本衛生検査所協会や、日本臨床検査薬協会などは、現場が混乱を来さないような措置を厚労省に求めており、「厚労省への働きかけが実った」と胸をなで下ろしている。
厚労省は、「通知の書きぶりによっては、薬卸で販売できなくなってしまうような印象を与える部分もあった」とし、通知と事務連絡で「売れるものと、そうでないものを分かりやすく示した」と説明した。