日本OTC医薬品協会会長 杉本雅史

日本OTC医薬品協会では、生活者のセルフメディケーション実践の支援環境を整え、健康寿命延伸の一翼を担うべく、昨年5月に「OTC医薬品産業グランドデザイン」を策定しました。
本グランドデザインは、セルフメディケーションの推進を初めて国策として位置づけた政府の「日本再興戦略」を踏まえ、少子高齢化や人口減少、社会保障費の増大など今後予想される環境変化を想定し、2025年のOTC医薬品産業の将来像を、生活者の視点を中心に、厚生労働省などの関係省庁の指導も受け、約1年かけてまとめたもので、具体的に「11の戦略」と「30の戦術」を盛り込んでいます。
健康寿命延伸に向け、国民の行動変容を支援する環境を整える施策として、セルフメディケーション推進税制の創設、より幅広い医薬品選択肢提供を可能とする医療用医薬品のスイッチ化の加速、さらに、既存製品においても生活者目線に合わせた、分かりやすい効能効果表現の見直し等を挙げています。
特に今般創設される新税制の内容を踏まえ、医療用医薬品のスイッチ化の加速を強く働きかけていきます。
また、専門家の支援を得られる環境を作っていくことが重要との認識のもと、地域包括ケアシステムの支援を掲げ、薬局、ドラッグストアにおける検体測定室等の環境整備の支援に併せて、医師、薬剤師、看護師等が協働し、連携が強化されるよう進めてまいります。さらに、学校における学習指導要領の改正を踏まえ、くすり教育体制の強化も重要なテーマとなります。
他方、日本のOTC医薬品の品質の高さ、品揃えの豊富さなどが高く評価され、インバウンド需要が急速に高まっており、国内OTC医薬品市場の活性化に大きく寄与しつつあります。訪日外国人に対する情報資材の多言語化は喫緊の課題であり、しっかりとした情報提供体制を整えることで、日本のOTCブランドの一層の浸透を図っていきます。
OTC薬協は、万人の願いである健康のまま人生を謳歌するという健康寿命の延伸に貢献していくことを基本に、諸施策を着実に実行し、OTC医薬品産業の活性化を実現していきます。
定量的には、国内OTC薬市場を25年に1兆8000億円、同じく海外OTC薬市場を3500億円にまで拡大し、国内・外で2兆1500億円(年率約5%強成長)の市場規模を目指します。
長らく微減傾向が続くOTC薬市場において2兆円超の産業に成長させるという目標を実現していくことは容易ではありませんが、セルフメディケーションの推進は時代の要請であり、グランドデザインに掲げた諸施策の実行により、実現できると考えています。