日本保険薬局協会会長 中村勝

診療報酬改定の大筋が決着し、われわれの業界は行政から示された方向性に対して、答えを出さなければなりません。一方、財政は非常に厳しく、限られた財源で国民に最高の医療を提供する必要があります。このような環境下で、保険薬局が利益を追求するだけでは社会性、協調性が伴っていないと批判されます。医療は地域性が強く、質が担保されなければなりません。
近年、強烈な調剤バッシングにさらされ、昨年ほど保険薬局のあり方が問われる年はないかと思います。われわれ保険薬局の経営に携わる者として、厳しい意見にも耳を傾け、診療報酬のみに依存しない新しい保険薬局を作り上げる必要性を強く感じています。
今年の診療報酬改定の内容が明らかになるにつれ、保険薬局の経営は厳しくなるとの悲観論が高まっていますが、地域住民から信頼される「かかりつけ薬局・薬剤師」として、存続しなければならないことは明白です。われわれは、従前の保険薬局の経営から脱し、国民が求める薬局に変わる努力が必要です。
昨夏、横浜で「第1回全国ファーマシーフェア2015」を開催しましたが、大きな反響に驚きました。このフェアでは、新しい取り組みや効率化した調剤業務などを公開し、薬局・薬剤師の活動やそれに携わる企業などの姿を「見える化」したことが、多くの方の関心を集めたと思います。このことから、かかりつけ薬局・薬剤師になるためには、適切な情報を国民や行政・各種団体に届ける必要があり、広報活動の重要性を痛切に感じています。
一方、国の財政は社会保障費の増大を全て受け入れられるほどの余裕はなく、今年度から2018年度までの3カ年の伸びを1.5兆円程度に抑制する方針です。また、国民からは医薬分業のメリットを実感しにくいとの声もあり、保険薬局にも費用対効果が求められています。
このような状況で、今後保険薬局に求められる機能は計画経済下で診療報酬のみで収益をあげることではなく、市場経済下でOTC薬、トクホ、機能性表示食品、サプリメントなどの物販の充実や血糖値等の簡易検査の実施で地域住民の健康をサポートする新しい機能が求められています。
特に、かかりつけ医と連携し、疾患別に対応できる薬剤師や管理栄養士が食の観点から未病から疾病まで幅広く地域住民の健康にかかわることで、身近に保険薬局を感じてもらえると思います。さらに、簡易検査で異常値が発見されれば、かかりつけ医に受診するよう地域住民に勧めることで、医薬分業のメリットを実感してもらえると思います。