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薬剤師配置に有効なエビデンス

2022年11月25日 (金)

 回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟への薬剤師の配置をどのように推進するかが課題になっている。日本病院薬剤師会は、これらの回復期病棟でも病棟薬剤業務実施加算を算定可能となるよう求めているが、実現には至っていない。要望の強化に向けて、薬剤師配置のメリットを示すエビデンスの充実が必要だ。診療報酬の有無に関わらず、現場の医師や看護師から要望してもらう形で、病院経営者に配置を認めてもらう方策もある。

 回復期は、急性期の経過後、ADLの向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する期間。回復期リハ病棟、地ケア病棟では、入院料施設基準の算定に必要な医療従事者として薬剤師は明記されていない。その上、薬剤管理指導料や病棟薬剤業務実施加算は算定できない。こうした背景から薬剤師の病棟配置が十分に進んでいないのが現状だ。

 回復期病棟での診療報酬を求めるには、根拠を示す必要がある。日病薬学術第8小委員会は今年度から、回復期病棟における薬剤師介入の有用性に関する調査研究を開始した。調査に協力する196施設を対象に、薬剤師の積極的介入群と非積極的介入群に分けて、様々な指標のアウトカムを比較する計画で、早くて来春頃にまとまる調査結果に期待したい。

 回復期病棟の診療報酬は包括的な体系となっており、薬剤師の業務も含まれている。包括的な診療報酬から病棟薬剤業務実施加算等だけ外に出して評価を獲得するのはハードルが高いとの指摘もある。2年後の改定は、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等の報酬が同時に改定されるトリプル改定となり、財源も厳しいようだ。

 同加算の算定にこだわると、実現は遠のくかもしれない。別の形の評価として、回復期リハ病棟、地ケア病棟での入院料施設基準の算定に必要な医療従事者として薬剤師の明記を求める戦略もある。ただ、薬剤師を確保できない病院は反発するだろう。

 一方、診療報酬の有無に関わらず、回復期病棟での配置を進める手もある。急性期病棟と回復期病棟を併設するある病院では、急性期全病棟での薬剤師の常駐を実現。回復期への配置は認められなかったが、急性期病棟での業務を続けるうちに必要性を実感した現場の医師や看護師から、回復期病棟にも薬剤師を配置してほしいとの声が挙がるようになった。診療報酬の評価がないとして首を縦に振らなかった病院経営者も、現場の声に押されて回復期病棟への配置を容認したという。

 その病院では、PBPMによる処方代行入力件数、処方提案件数など、薬剤師の業務量やメリットを具体的な数値で示したことが奏効したようだ。こうしたアプローチは各病院の薬剤師の努力で実行できる。先進的な病院の事例を参考に、各地で取り組みを進めてもらいたい。



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