米FDAがCOVID-19のモノクローナル抗体薬の緊急使用許可を取り消しに

2022年12月20日 (火)

Photo Credit: Adobe Stock

 米食品医薬品局(FDA)は11月30日、これまでに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬として緊急使用許可(EUA)を付与したモノクローナル抗体薬のうちの一つ、ベブテロビマブのEUAを取り消したことを発表した。FDAは取り消しの理由について、「医療従事者向けのファクトシートに含められたデータから、オミクロン株の派生型であるBQ.1およびBQ.1.1に対する中和効果が期待できないと判断されたため」と述べている。

 米疾病対策センター(CDC)によると、BQ.1およびBQ.1.1は現在、米国の新規感染例の62%近く(注:12月10日時点で67.9%)を占めているという。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授のArturo Casadevall氏は、「大きな問題は、モノクローナル抗体がウイルスのごく小さな部分に結合することだ。ウイルスの変異に伴い、既存の抗体はウイルスに結合できなくなり、もはや使用できる抗体薬はほぼ全て失われたといえる」とNBCニュースに対して語っている。

 FDAは医療従事者に対し、BQ.1およびBQ.1.1に対する有効性を保持していると考えられるFDAの承認薬またはEUAを与えられた薬剤を使用すべきとしている。そうした薬剤の一つが、抗ウイルス薬のパクスロビドである。パクスロビドは、重症化リスクの高い軽度から中等度のCOVID-19患者に対して、1回3錠を1日2回、5日間投与する。ただし、パクスロビドは、がんや移植のレシピエントなどが服用する免疫抑制薬と併用すると相互作用を起こす危険性がある。そのため、こうした患者に対してはこれまでベブテロビマブの使用が推奨されていた。

 米テキサス州立大学、臨床検査科学プログラムのRodney Rohde氏は、「依然として、新型コロナウイルス感染に対して極めて脆弱な集団が存在している。この冬から春にかけて、新型コロナウイルスが再び猛威を振るい、死亡率や病床使用率が高くなることが懸念される」と話す。

 免疫抑制薬を使用している患者には、回復期患者血漿療法と呼ばれる治療法も利用できる。Casadevall氏は、「COVID-19から回復した患者の血液に由来する回復期血漿には多様な抗体が含まれているため、モノクローナル抗体とは違い、幅広いウイルスに対する効果が期待できる」と説明している。

 さらに今後、新たな派生型に適合する新しいモノクローナル抗体も利用できるようになる可能性がある。Casadevall氏は、「このような抗体の開発に私はまだ希望を抱いている。他の変異株にも有効な抗体を見つけられるはずだ」と話す。

 このほか、アストラゼネカ社が開発中の抗体カクテル療法が、年内にも利用可能になる可能性がある。また、イーライリリー社も、有望なモノクローナル抗体の探索と評価を実施中であるとNBCニュースが報じている。かつて使用を許可されていたモノクローナル抗体を開発したVIRバイオテクノロジー社は、「新型コロナウイルスとの闘いにおいて、特にハイリスク患者にとっては、モノクローナル抗体が重要な役割を担うというわれわれの確信に変わりはない」とコメントしている。(HealthDay News 2022年12月5日)

Source
https://consumer.healthday.com/covid-treatment-2658828742.html

(参考情報)
More Information
https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/fda-announces-bebtelovimab-not-currently-authorized-any-us-region


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