世界初の非中枢神経刺激薬も
厚生労働省が22日付で承認した新医薬品では、世界初の非中枢神経刺激薬となる注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療薬「ストラテラ」や、HER2陽性乳癌治療薬として初の経口分子標的薬となる「タイケルブ」が登場した。また、過去に抗精神病薬として市場から撤退したものの、治療抵抗性の統合失調症治療薬として再登場した「クロザリル」も血液検査の義務化を条件に承認を取得している。
アラミスト点鼻液:グラクソ・スミスクライン
「アラミスト点鼻液27・5μg56噴霧用」(一般名:フルチカゾンフランカルボン酸エステル)は、1日1回投与の鼻噴霧用ステロイド薬。アレルギー性鼻炎を効能・効果に承認を取得した。
既存品の「フルナーゼ」に比べ、効果が速く発現、持続する特徴を持つ。また、世界で初めて横押し型の鼻噴霧器を採用。人間工学に基づき、握りやすい設計としたことで、患者の利便性に配慮した。2007年に米国で承認され、現在60カ国以上で承認されている。
アピドラ注:サノフィ・アベンティス
「アピドラ注ソロスター、同カート、同オプチクリック、同100単位/mL」(一般名:遺伝子組み換えインスリングルリジン)は、製剤中に亜鉛を含まない特徴的な製剤設計が行われた超速効型インスリンアナログ製剤。
生理的な追加インスリン分泌パターンを再現すると共に、糖尿病患者の生活に合わせて、柔軟に投与できる食直前投与を可能にした。米国、欧州では04年に承認を取得し、現在80カ国以上で承認されている。
クラビット錠・細粒:第一三共
「クラビット錠250mg、同500mg、同細粒10%」(一般名:レボフロキサシン水和物)は、世界標準となっているクラビット500mgの1日1回投与法を可能にした新用量・剤形で、PK/PD理論に基づいて開発された。
これまで日本では、100mgの1日3回投与しか承認されていなかったが、今回、最高血中濃度を上げる500mgの1日1回投与を実現することで、耐性菌の抑制が期待できる。既にクラビットの500mg高用量投与法は、世界120カ国・地域で承認されている。
ノルディトロピン注:ノボノルディスクファーマ
「ノルディトロピンS注5mg、同10mg、ノルディトロピン・ノルディフレックス注5mg、同10mg、同15mg」(一般名:遺伝子組み換えソマトロピン)は、00年から発売されているヒト成長ホルモン製剤。今回、新たに重症の成人成長ホルモン分泌不全症患者への使用が認められた。
ストラテラカプセル:日本イーライリリー
「ストラテラカプセル5mg、同10mg、同25mg」(一般名:アトモキセチン塩酸塩)は、小児の注意欠陥/多動性障害(AD/HD)を適応症とする世界初の非中枢神経刺激薬。
従来のAD/HD治療薬とは異なり、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで効果を発揮する。また、非中枢神経刺激薬のため、依存・乱用のリスクが低いとされている。既に海外では、03年1月に米国で発売以来、世界84カ国で承認されている。
タイケルブ錠:グラクソ・スミスクライン
「タイケルブ錠250mg」(一般名:ラパチニブトシル酸塩水和物)は、グラクソ・スミスクラインが開発した経口分子標的抗癌剤。
EGFRとHER2の両方の受容体型チロシンキナーゼを阻害するのが特徴で、HER2が過剰発現している手術不能・再発乳癌を適応症に、カペシタピンとの併用療法で承認を取得した。既に海外では、世界65カ国で承認されている。
クロザリル錠:ノバルティスファーマ
「クロザリル錠25mg、同100mg」(一般名:クロザピン)は、治療抵抗性統合失調症の適応を取得した抗精神病薬。2種類以上の抗精神病薬で十分な効果が得られない患者に使用できる。
クロザリルは1969年に抗精神病薬として承認されたが、75年にフィンランドで相次ぐ死亡例や重篤な有害事象が報告され、世界各国で開発・販売中止となった。
しかし、その後、既存薬で効果がない患者に有効性が示され、血液検査の義務化を条件に、治療抵抗性の統合失調症患者への使用が再開されている。既に世界97カ国で承認されており、380万人の患者に対して使用実績がある。
なお、無顆粒球症・好中球減少症などの重篤な副作用に対応するため、クロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)への登録が承認条件として義務づけられた。
ミコンビ配合錠:日本ベーリンガーインゲルハイム
高血圧治療薬の「ミコンビ配合錠AP、同BP」は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の「テルミサルタン」とサイアザイド系利尿薬「ヒドロクロロチアジド」(HCTZ)の合剤。1錠中にHCTZ12・5mg+テルミサルタン40mgを含有する「AP」と、テルミサルタン80mgを含有する「BP」が承認された。
ARBの「ミカルディス」と同じく、日本ベーリンガーインゲルハイムが製造し、アステラス製薬が販売する。また、両社で共同販促を行う予定。
ジルテック錠、ドライシロップ:UCBジャパン
「ジルテック錠5、同ドライシロップ1・25%」(一般名:セチリジン塩酸塩)は、UCBジャパンが製造し、グラクソ・スミスクラインと第一三共が共同販売中のアレルギー性疾患治療剤。
今回、新たに小児に対する適応を追加した。これにより、5mg錠は7歳以上、ドライシロップは2歳以上の小児に使用できるようになった。
ドキシル注:ヤンセンファーマ
「ドキシル注20mg」(一般名:ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤)は、ドキソルビシンを水溶性の高分子ポリエチレングリコールでコーティングしたステルスリポソーム製剤。
ドキソルビシンの腫瘍組織内における滞留時間を延長させ、濃度を高めることで有効性を改善すると共に、遊離ドキソルビシン濃度を抑えることによって副作用を軽減するよう設計されている。
今回、エイズ関連カポジ肉腫に加え、新たに再発卵巣癌の適応症を取得した。既にドキシルは、80カ国以上で発売されており、再発卵巣癌に対する適応は世界75カ国の承認を取得している。
ニフレック内用/ガスモチン錠・散:味の素/大日本住友製薬
経口腸管洗浄剤「ニフレック内用」と、消化管運動機能改善剤「ガスモチン錠2・5mg、同5mg、同散」(一般名:モサプリドクエン酸塩水和物)の併用による、バリウム注腸X線造影検査前処置の適応を追加した。ニフレックとガスモチンを併用することで、バリウム注腸X線造影検査を効率化し、検査受診者の身体的負担を軽減する。
リスパダールコンスタ筋注:ヤンセンファーマ
「リスパダールコンスタ筋注用25mg、同37・5mg、同50mg」(一般名:リスペリドン持効性懸濁注射液)は、統合失調症を適応とする「リスパダール」の、長時間作用型製剤として開発された注射剤。
生体内分解性ポリマーを用いた極小の球状製剤(マイクロスフィア)に、リスペリドンを封入した。専用懸濁用液で懸濁後に臀部筋肉内に投与すると、リスペリドンを含むマイクロスフィアが徐々に放出される設計となっているため、2週間に1回の投与で効果を持続できる。既に世界92カ国・地域で承認されている。