慶大・谷川原教授
ヤクルトと慶應義塾大学は、抗癌剤反応性バイオマーカーの共同研究の結果、大腸癌治療の第一選択薬「オキサリプラチン」(製品名:エルプラット)の効果を予測する、バイオマーカー候補蛋白質「S100‐A10」を見出した。現在、結腸・直腸癌患者を対象に、製造販売後臨床試験を実施中で、試験に参加した患者から血液を採取し、この蛋白質がバイオマーカーとして活用できるか解析を進めている。15日に会見した研究責任者の谷川原祐介氏(慶應義塾大学医学部教授)は、「できれば癌組織を採取せず、末梢血を使った検査を目指したい」と実用化への意欲を語った。
研究プロジェクトは、慶大リサーチパークとヤクルトの産学共同研究として、2006年4月にスタート。慶大以外の国内16019医療機関、ヤクルト中央研究所、医薬開発部と連携し、大腸癌の標準治療薬として世界的に使用されている「オキサリプラチン」「イリノテカン」(製品名:カンプト)の効果を予測するバイオマーカーの探索を進めてきた。
探索研究では、蛋白質の全体像(プロテオーム)と代謝物質の総体(メタボローム)を網羅的に解析。その結果、谷川原氏らは、「オキサリプラチン」が効きにくい大腸癌細胞株で高発現している蛋白質「S100‐A10」を見出した。
この成果を受け、現在、「S100‐A10」がオキサリプラチンの効果を予測するバイオマーカーとなり得るかどうかについて、結腸・直腸癌患者を対象に、製造販売後臨床試験が実施されている。患者エントリーは約2年を予定。試験では、新たなバイオマーカーの探索も同時に進めていくことにしている。
谷川原氏は「遺伝子検査のハードルは高い」と指摘し、末梢血による蛋白質検査法の実用化を目指したい意向を示した。共同研究は11年3月まで行われる。