第56回日本薬剤師会学術大会
座長
日本薬剤師会理事
舟越亮寛
和歌山県薬剤師会常務理事
坂東幹彦
超高齢社会であるわが国の課題として、高齢者のフレイル(虚弱)を予防することが挙げられる。加齢によるサルコペニア(筋肉低下による運動機能低下)、痛み→引きこもり→社会的な孤立→栄養低下→筋肉低下というフレイル・サイクル、悪循環に陥る。また、転倒や骨折あるいは慢性疾患の悪化をきっかけとして要介護状態になる可能性が高くなり、このサイクルを断ち切ることが重要であり、薬物療法と並行して栄養管理、嚥下管理、社会参加へのケアが必要となる。高齢者は何らかの薬を服用していることも多く、薬剤師が関わることが期待されている。
具体的には、薬剤師は薬剤の有害事象の可能性や発現のモニタリング、適正使用のための服薬管理方法についての情報を多職種と共有し、薬剤の有害事象の予防、早期発見と対応、代替処方の提案に関わる役割を担う。処方についてはポリファーマシー状態の解消、合剤の活用、口腔崩壊錠の活用も製剤学の知識を有している薬剤師ならではの関与も大切である。その際には医療、介護の多種専門職との連携が欠かせない。
本分科会では、薬剤師の視点前に医師、栄養士といった多種専門職の視点、地域連携のあり方を前半に紹介いただき、後半に1地域での行政、薬剤師会、薬局での事例を紹介いただく。
健康サポート薬局制度が2017年に発足後、その役割として薬局から地域住民への健康情報の発信が求められている。近隣の生活者向けにフレイルの予防のための運動や食事のセミナーなどを行いながら、かかりつけ薬剤師として、一人ひとりの患者さんに目を向け、薬のみならず様々な相談を受けながら必要に応じて受診勧奨や主治医へ服薬状況報告を行うこともわが国の課題解決につながるものであり、各地域で推進していくフレイル予防についての理解を深めていただければ幸いである。
(舟越亮寛)