第56回日本薬剤師会学術大会
座長
日本薬剤師会理事
井深宏和
和歌山県薬剤師会常務理事
武田千晴
わが国の透析患者は増加傾向にある。これは人口の高齢化が進んでいることに加え、糖尿病患者の増加とその合併症である糖尿病性腎症が増加しているためであると言われている。また糖尿病に限らず高血圧、動脈硬化を主因とする腎硬化症もあり、今後、高齢化に伴ってCKDの予防と重症化抑制の重要性はさらに増していく。
CKD患者は、薬物の排泄機能低下に伴い、薬効の増強だけでなく副作用の発現リスクも高い。また複数の薬剤が投与されることも多いことから、相互作用を含めた医薬品の適正使用には十分な注意が必要である。そのため、薬を一元管理できる薬局薬剤師としての役割はとても大きいと考える。
本分科会では、基調講演として、和歌山県立医科大学腎臓内科学講座の大矢昌樹准教授から、「医薬連携を通じたCKD重症化予防」として薬局薬剤師の役割の重要性について、検査データの共有やCKDシール事業を通じた病薬連携や服薬アドヒアランスの観点からCKD重症化予防について講演いただく。次いで、東京医科大学病院薬剤部の竹内裕紀薬剤部長から、本分科会のテーマを実践するためには、薬物体内動態の基本的知識を身に付け、それを駆使していくことが重要であり、CKD患者に対する薬物投与量調節もその一つであることから、「現場で役立つ薬物体内動態の知識-薬剤師なら使いこなそう」について講演いただく。
続いて熊本大学大学院生命科学研究部臨床薬理学分野の近藤悠希准教授から、適切に腎機能を評価した上で減量することで過量投与や有害事象を回避でき、そこに薬局薬剤師が関与することが大切であることから「薬局薬剤師視点で実践する腎機能低下患者における薬物療法の最適化」について講演いただく。最後にメイプルかも調剤薬局の東俊之氏から地域住民の腎臓を守るための実際の取り組みについて「薬局による腎機能数値の積極的な把握と腎機能共有ツールの作成」と題して講演いただく。
本分科会では、薬剤師として薬学的に薬の面からアプローチして患者の腎臓を守るためにできることを検討することにより、ご参加の先生方の日々の業務に生かしていただける知識を得る機会となれば幸いである。
(井深宏和)