第56回日本薬剤師会学術大会
座長
日本薬剤師会常務理事
山田卓郎
和歌山県薬剤師会常務理事
大桑邦稔
近代日本の首都圏に未曾有の被害をもたらした関東大震災から100年の節目にあたる今年、本分科会では30年以内の発生確率80%の高確率かつ想定される被害面積と規模が非常に大きな南海トラフ巨大地震の発生に備え、薬剤師が果たすべき役割とそのための準備について考えたい。
基調講演として社会安全研修センター長の河田恵昭氏から「南海トラフ巨大地震を国難災害としないための解決策」と題し、予知ができない突然起こる地震での被害を劇的に減らす方策を、災害時に起こる社会現象としての「相転移」からご説明いただく。
阪神淡路大震災後には、災害時の初期救急体制が不十分であることが指摘されたが、東日本大震災以降の災害対策では避難生活者への保健医療が新たな課題となり、様々な保健福祉に関わる支援チームの調整体制整備が進められようになった。このように多くの災害を経験するごとに災害医療体制が見直され、地域の災害医療体制整備がなされてきている。この中で薬剤師には、医薬品管理業務を中心とした各医療チームの後方支援にとどまらず、薬剤師業務全般を保健医療福祉調整本部の中で担っていくことが求められている。被災地で薬剤師に望まれる活動について医師の視点から有田市立病院管理者である加藤正哉先生に、そして薬剤師である兵庫医科大学危機管理医学講座助教の渡邉暁洋先生から薬剤師の可能性についてご講演をいただく。
続いて熊本県薬剤師会の福原慶寿専務理事からは熊本県が2018年に策定した「熊本県災害時医療救護マニュアル」に基づき、20年7月豪雨災害で実際にコーディネーターを派遣し、他の医療・保健関係団体と連携した活動についてご報告をいただく。その後、南海トラフ巨大地震に備える発災後の和歌山県での行動計画について、和歌山県薬剤師会の古川晴浩常務理事からご紹介いただき、今後の大規模災害に備えて準備すべき事項と薬剤師が果たすべき役割について考えたいと思う。
(山田卓郎)