第56回日本薬剤師会学術大会
座長
日本薬剤師会副会長
渡邊大記
和歌山県薬剤師会常務理事
尾原崇
医療におけるICTの活用が進む中、デジタル技術を用いた治療(DTx:Digital Therapeutics)として、治療用アプリの海外での実用化が進みつつある。この治療用アプリについては現在、製薬企業、ベンチャー企業各社により開発が進められており、わが国においては、2020年に最初の承認がなされた「ニコチン依存症治療アプリおよびCOチェッカー」をはじめ、その後「高血圧治療補助アプリ」や認知行動療法の普及を目指した不眠障害に対する「不眠障害用アプリ」がプログラム医療機器として承認されている。現在はこれら3製品にとどまっているが、治療における新たな手段として注目されており、既存の薬物療法との併用による相乗効果や医療費削減効果などが期待されている。
一方で、DTxに用いる医療機器を使いこなすには一定のデジタルリテラシーおよびヘルスリテラシーが必要であり、患者にいかに活用方法を理解して治療を継続してもらえるかが適用する際の課題となる。実際の臨床現場における使用では、多くの患者を抱える医師が直接、アプリの使用方法の説明や使用におけるトラブル等への対応は大きな負荷となるため、医師による診断のもと薬剤師がその適正使用に係る任を担い、処方と調剤の関係を治療用アプリへも適応させていくことを考える必要がある。また、適応された患者が治療用アプリを使用していくに当たっては継続性が重要であり、そのために使用状況を把握した上でのフォローアップを薬剤師が担い、処方医と連携していくことが治療用アプリの効果につながるだろう。このような薬剤師の関与のためには制度上の整備も必要になってくる。
治療用アプリの今後のさらなる普及に向けた薬剤師の関与について考えると共に、現在の承認状況、またIoTデバイスを用いた薬局・薬剤師での情報収集の調査や実際に開発に当たっている企業の実情についての理解を深めたい。その後にはディスカッションを行い、それぞれの現場における今後を見据えた対応をするための知識を得る機会となることを望む。
(渡邊大記)