文部科学省が2023年度の6年制薬学部における退学率等に関する調査結果を公表した。退学率については、最高で48.1%と約5割に達する大学があり、さらに8大学が30%を超えた。
23年度薬剤師国家試験のストレート(現役)合格率も1割台にまで落ち込んだ大学があったほか、3割を切った大学も4校あった。20%ギリギリの大学もあり、30%台の大学も目立ち、予断を許さない。この状況は改善するばかりか、年々悪化している深刻な状況にある。
学生の半数近くが退学するということは、高等教育における異常事態と言えるのではないか。薬学部に入学しても授業について行けず留年が続き、最終的に国試を受験できたとしても不合格になる悪循環が想像できる。
そもそも一部の大学では、低学年次に“リメディアル教育”という名の補習が行われている。医療チームの重要な一員で、国家資格の薬剤師になるため、必要な基礎学力が足りていない学生を入学させれば必然の結果とも言えた。以前から指摘されていたことだが、国の調査で可視化された結果、より問題の根深さが浮き彫りになった。
約20年前、悲願の薬学教育6年制導入と小泉内閣の規制緩和による薬学部新設ラッシュが同時期に起こったことがボタンの掛け違いの始まりだったかもしれない。これまでじわじわと新設ラッシュによる6年制教育の歪みが露見してきていたが、最近ではその歪みが一層大きくなり危険水域に入ってきたと感じる。
ようやく文科省も入学定員を抑制する方向に動き出したが、事ここに至ってもさらなる薬学部新設は止まらない。むしろ、25年度からの定員抑制を前に、一部大学の“第二次新設ラッシュ”をもたらす皮肉な結果となっている。
実際は厳しい。早速、新設しても定員を満たせず、文科省から指摘事項を受ける事態も見られた。既に飽和なのは明らかだ。
一方で、入学定員を削減する計画を示し、自主的に定員削減を図る動きが出てきたことは評価できる。大学として定員数と充足率を考え、本当に薬剤師を目指す学生のためになる薬学教育とは何なのか、改めて考えるきっかけにしてほしい。
今後はこうした取り組みが一層求められそうだ。私立大学全体でも定員割れが初めて5割台に突入した。少子化が加速する時代に、薬系大学は医療を担う薬剤師養成という重い責任を負っている。その責任を果たすためにも、しっかりと基礎学力を持った学生を受け入れる入試改革は待ったなしだ。
大学の経営状況が厳しさを増している状況は理解できるが、だからといって不健全な経営で学生に不利益をもたらしていいはずがない。医療に貢献する薬剤師を養成し、自信を持って社会に送り出すことは、大学としてのアピールにもつながるはずである。