日本医薬品登録販売者協会会長 樋口俊一
毎年、年頭に当たり十巻十二支の干支の話を引用させていただいています。2024年は甲辰(きのえ・たつ)の年です。この年は、春になって古い殻から新芽を出していくという意味ですが、まだ余寒が厳しいため、勢い良く芽を伸ばすことができないさまです。
甲は殻を現していて、その殻を破って歩みを始めなければなりません。それには様々な抵抗や妨害があってなかなか前へ進みません。そこでこの妨害と闘いつつ、慎重に伸展を図らなければ成功しないと言って良い年になります。
60年前の1964年は東海道新幹線が開通し、第18回オリンピック東京大会がアジアで初めて開催されました。これらを契機に日本は高度経済成長に入り、国が大きく変化していきました。そして、ビール、お酒が全面的に自由化された年でもあります。
私たちを取り囲む環境も大きな変化の波が押し寄せてきています。コンビニエンスストアのローソンを中心に、店舗に資格者がいなくても本部などの遠隔地からデジタルを活用して医薬品の情報提供をすることによって、医薬品が販売できるように規制緩和を国に要求していることは皆さんもご存じの通りです。
これらのことを議論する厚生労働省の検討会での結論を踏まえ、早ければ本年中に、国会で医薬品医療機器等法の改正案が審議される予定です。先般、ある件で厚労省を訪問してきました。その際、厚労官僚から「今ではデジタルが発達し、対面と全く変わりはありません」との発言がありました。
国はDXに相当力を入れています。今回の薬機法改正では登録販売者の役割が大きく変わる可能性を秘めていると感じました。
今年の干支は妨害と闘いつつ、慎重に伸展を図らなければならない年です。60年前、お酒の自由化で流通形態が大きく変化しました。医薬品も自由化に向けて、門戸が開かれていく可能性を秘めた年になりそうです。
機械ではできない生身の人間の特性を生かしていかなければ、これからは登録販売者の仕事が機械にとって代わっていく可能性があります。日本医薬品登録販売者協会としても、登録販売者の皆様の自己研鑽に役立つ情報を発信していきますので、ご活用していただき地域生活者の健康を守る専門家として、より一層活躍されますことを祈念し、年頭所感とします。