小林製薬の紅麹関連製品による健康被害問題は、機能性表示食品の販売、制度の見直しが必要であることを突き付けている。
機能性表示食品は約7000品目、健康食品市場(出荷金額)の約2割を占める。事故が起きれば被害は大きくなる。林芳正官房長官は、消費者庁に5月末までに同食品制度のあり方をまとめるよう指示した。そこで考えてほしいのは販売段階の対策だ。
製品は、最終的には店頭を通じ消費者に販売され、摂取される。ゆえに実店舗販売の場合、薬局、ドラッグストア(Dgs)が被害防止、被害拡大防止の番人になる。それを可能にするには制度見直しが不可欠である。なぜなら、販売の現場で被害を防ぐには課題が少なくないからだ。
国は健康食品について、食品だから安全ということではなく、錠剤・カプセルなどサプリメントタイプの過剰摂取のリスクを発信してきた。さらに、使用者の約3割は処方薬と併用するも、多くは医師らから健康食品の摂取状況の確認を受けていないとの調査結果も公表してきた。
しかし、医療現場からは対応するにも十分な情報がなく自信を持って助言、指導ができないとの声がある。仮に成分に関する情報があっても、リスク評価の解釈が難しいとの指摘もある。
健康食品の健康被害の7割は「軽快」に向かうとの報告があり、比較的軽微なものが多いと見られるが、正確な実態は分かっていない。それが現場で判断できる情報の少なさにつながっているのではないか。
そのような現状で、現場の対策を支える情報を担保するにはどうしたら良いのか。
健康食品制度に詳しく、昭和女子大学食健康科学部の元教授(論文発表時は教授)である梅垣敬三氏らの論文によると、機能性表示食品制度の検討で参照された米国の「ダイエタリーサプリメント」制度では、軽微から重篤までの有害事象の報告(重篤以外は任意報告だが一定年数の記録保管が必要)、分析、評価する仕組みが米国食品医薬品局(FDA)にはある。
論文では、2008年から11年の間に義務報告数が3倍に増加したことに触れ、背景にはGMPによる安全性管理、有害事象報告に関するFDA査察を挙げている。日本と異なり、錠剤・カプセルなどサプリメントのGMPは義務である。
国の一定の関与があれば、現場が被害防止策を取りやすくなる可能性がある。企業、行政での情報集積を制度的に確実なものにし、リスク情報の速やかな情報提供を現場に行うことで被害の拡大を防げる可能性が高まる。また、今回の事案は、製造・品質管理も問われている。
今後検討される制度のあり方では、GMP義務化、有害事象報告・評価制度の強化、重篤被害の報告義務化、リスク啓発活動の強化――は検討すべき論点だと考える。