2025年の地域包括ケアシステム構築に向け、地域薬剤師会の力量が試されている。今年度から全国で第8次医療計画がスタートし、地域に必要な医薬品を過不足なく提供する医薬品提供体制の整備を盛り込む都道府県が多く見られた。6月に施行される2024年度調剤報酬改定においても、薬剤師会が地域の住民や医療関係者に対して情報発信や周知を行うことを要件に設けている。
都道府県単位ではなく、市町村レベルで活動する地域薬剤師会の存在意義を示す好機とも言えるが、現状は理想にはほど遠い。薬剤師会は、日本薬剤師会、都道府県薬剤師会、地域薬剤師会の3層構造となっているが、全国で約700程度存在する地域薬剤師会が十分に機能しているとは言い難いのが現状だ。
本来は、地域薬剤師会が自ら考え実行し、都道府県薬剤師会、日本薬剤師会がサポートするというボトムアップの仕組みが望ましいが、国や日本薬剤師会が決めた政策を都道府県薬剤師会、地域薬剤師会に実行してもらう受け身型の3層構造から抜け出せていない。
一部の地域薬剤師会は、行政や医師会などと連携した医薬品の安定供給や感染症、災害対応で独自色のある活動を展開している。その一方で、多くの薬剤師会については活動内容が外から見えない。
最大の課題は組織率の問題だ。1人以上の会員薬剤師がいる薬局の加入割合が7割未満の地域薬剤師会が、全体の1割強あるとの調査結果が公表された。積極的に活動してくれる会員数になるとより少なく、都内の地域薬剤師会幹部は「アクティブに活動してくれているのは会員薬局の3割程度」と嘆く。「入会しても理事にはなってくれない」「リーダーシップを持った人材を育てられない」などの悩みを抱える。
会員の減少と同時に高齢化も進行しており、特に20代の若手薬剤師の入会率が低いという厳しい現実がある。若手薬剤師の会費を優遇するなどの施策を講じているが、局面を大きく打開するような有効策にはなっていない。
打開策としては、チェーン薬局やドラッグストアで勤務する薬剤師の取り込みが挙げられる。例えば、東京都薬剤師会の会員構成比率は、既に勤務薬剤師が半数弱を占める。薬局経営者主体から薬局経営者と勤務薬剤師が参加する薬剤師会へとシフトしている状況を反映した結果だ。
地域活動に興味を示す勤務薬剤師は一定程度いるはずで、薬剤師会のメリットをどう提示するかがカギになる。地域活動に参加する際に薬剤師会を活用してもらったり、大学薬学部と薬剤師会が連携し、地域の課題に基づいた研究から得られた成果を地域のエビデンスとして発信するなど様々な手段はあるはずだ。
薬剤師会は地域医療を支えるために欠かせない存在である。積極的な意識を持ち、成功例を導き出してほしい。