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流通改善の重大機会を逃すな

2024年04月26日 (金)

 3月1日から改訂版「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」が適用されている。同4日には日本医薬品卸売業連合会が宮田浩美会長名で、会員宛てに同改訂を「従来の取引慣行を見直す重要な転換点として捉え、流通改善推進に向けた一層の取り組みをお願いする」と通知して、古い商習慣からの脱却を訴えた。

 改訂版では、医薬品の安定供給を確保する観点から、特に医療上の必要性の高い医薬品として、基礎的医薬品、安定確保医薬品(カテゴリーA)、不採算品再算定品、血液製剤、麻薬、覚醒剤および覚醒剤原料を列挙して、価格交渉の段階から別枠とし、個々の医薬品の価値を踏まえた単品単価交渉をすることが追記された。さらに、新薬創出等加算品などでも引き続き単品単価交渉を行い、「流通改善が後戻りすることのないようにすること」とクギを刺した。

 薬卸連は同22日、別枠品マスターデータベースを構築し運用を開始した。昨年、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が総価取引改善措置として、医療上必要性の高い医薬品において過度な価格競争で医薬品の価値が損なわれ、結果として安定供給に支障を生じさせる危険性を指摘し、従来取引とは「別枠」とすることについて「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」(流改懇)での検討、ガイドライン改訂の必要を指摘していた。

 同データベースは、価格交渉に携わる全ての流通当事者が、共通理解のもとで別枠品目の単品単価交渉に取り組めるようにガイドラインで別枠とされた品目を特定して提示したもの。厚生労働省による不採算品再算定品目の開示資料等により、JANコード単位で品目を特定している。今後、同データベースを活用して、卸業界内だけでなく購入側とも共通認識のもとで価格交渉を行っていく。

 そもそも医薬品流通問題への対応は、1983年3月に設置された「医療用医薬品流通近代化協議会」(流近協)まで遡る。それから41年、流近協から流改懇、有識者検討会など検討の場を変えつつ、緊急提言やガイドラインなど、いくつもの改善に向けた諸施策が出されてきた。長期未妥結・仮納入問題では改善を見たものの、一次売差マイナス解消や単品単価交渉においては、真の改善が図られたとは言い難い状況だ。

 40年以上、医薬品流通という独特な産業・業態は近代化や改善を目指して諸施策を繰り返してきたが、今回のガイドライン改訂はある意味で流通改善を実現する最後のチャンスとも言えよう。改善が図られなければ次のフェーズへの移行も想像に難くない。

 流通に携わる全ての当事者の覚悟が求められる段階に入った。医薬品を安定供給するという医薬品卸の使命を果たすために、ぜひガイドラインを完全に遵守して明日の姿を見せてほしい。



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