ジェネリック医薬品(GE薬)を中心とする供給不足問題の収束に向けてGE薬業界は、業界を挙げて取り組みを急がなければならない。厚生労働省の「後発品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」(産業構造検討会)は5月22日にまとめた報告書で、「5年程度の集中改革期間」を提案したが、それでは遅い。
振り返ると、供給不足問題に医療現場、患者はどれだけ振り回されてきたことか。今なおGE薬の3割が限定出荷・供給停止にあり、少しずつ改善しているが、製薬企業、卸、医療機関・薬局からは悲鳴が上がる。そんな状態が3年以上続き、今も収束が見えない。GE薬は医療で使用される医薬品の8割(GE薬のある医薬品のうち)に上り、医療基盤そのものだ。GE薬の供給不足は、必要な医療を保障する国民皆保険制度を根本から揺るがす事態である。
だが、この期に及んで5月24日、行政処分を受け業務改善を進めていた長生堂製薬の川内工場で不適切製造が発覚した。それに端を発して、広く医療で使われる抗菌薬の需給ひっ迫が再び起こりそうな事態である。
その4日後、武見敬三厚生労働相が、少々苛立ち気味に「後発品業界の再編は待ったなしだ」と述べ、安定供給できる策を「真剣に考えていただきたい」とGE薬業界関係者に迫った発言は、これ以上は待てないという市井の声を代弁したように聞こえた。
GE薬メーカーだけが悪いとは思わない。国を挙げた後発品使用推進策など政策が事業の形と行動を決めてしまう規制産業ゆえだ。相次いだ違法製造は許されないが、薬価の毎年改定等で収益力が低下する中、GE薬メーカー各社が一定以上の投資をして改善努力をしていることは認めなければならない。
しかし、もはや各社の努力だけでは限界に来ているのではないか。MeijiSeikaファルマの小林大吉郎社長によると、GE薬メーカー約200社の製造設備を集計すると、生産能力をフルに発揮すれば供給不足は起きるはずがないという。それでも起きているのはリソースが有効に活用されておらず、各社の努力が必ずしも供給力の最適化につながらないからだとの見方だ。
産業構造検討会は、報告書で「各企業において、企業間の品目統合やそれに伴う各企業での品目削除により少量多品目生産を適正化し、品目ごとの生産能力や生産規模を増大させ、採算が取れる生産体制を構築する必要がある。また、品目統合以外についても製造部門、品質管理部門、営業部門、販売部門など様々な段階での企業間の協業により効率化を図ることが期待できる」と提案した。厚労省は企業の取り組みを後押しする方針だ。
この動きはGE薬業界の好機と捉えていい。製造・供給能力を高めるためにも業界を挙げて検討を急ぐべき事項だろう。