政府の「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針)が6月21日に閣議決定された。全体の概要は割愛するとして、「主要分野ごとの基本方針と重要課題」の(創薬力の強化等ヘルスケアの推進)では、創薬の基本となる各ステージの臨床試験体制整備、承認審査体制強化、医薬品安定供給、後発品業界の構造改革、原薬確保方策など、幅広い取り組みの目標や方針を明記している。
薬価中間年改定に関連する部分は、政府が6月11日に経済財政諮問会議へ提出した原案では「2025年度薬価改定に関しては、イノベーションの推進や安定供給確保、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その具体的なあり方について検討する」と記述されていた。
これに対して、閣議決定された骨太の方針では、「25年度薬価改定に関しては、イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、そのあり方について検討する」へと変更された。
ここで重要なポイントとなるのが、“具体的な”の表現である。日本医薬品卸売業連合会の宮田浩美会長は、7月25日の理事会終了後の記者会見で、原案との違いについて2点あると説明した。一つは、現下の経済環境が16年の4大臣合意の時と大きく変わっていることに関する記述が原案にはなかったことである。決定された方針には「物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ」が追記された。
原案にあった「具体的な」という文言は、中間年改定を実施することが前提となり、改定の具体的事項である係数などを検討するような意味を持たされてしまう。薬卸連等はこの点を懸念し、中間年改定自体のあり方、つまり実施を前提としない廃止や中断などを含めた議論を展開できる文言への修正を要望していた。
宮田氏は、「骨太方針には、中間年改定という言葉ではなく、25年度薬価改定と書かれている。その意味で、われわれとしては25年度の薬価改定を、廃止は無理でも、中断するような方向へ持って行けるように活動をしていくことに意味があると考えている」と、今後25年度薬価改定の中断に向けて積極的に取り組んでいく姿勢を示した。
「具体的な」を外して薬価制度全体を表現したことは、宮田氏の言うように「実施ありき」という一つのハードルをクリアしたとも受け取れるが、単なる文書上でのやり取りに終わっては意味がない。
卸だけでなく薬価改定に大きな影響を受ける業界を挙げて、取り敢えず25年度改定、そしてその後の薬価改定のあり方を真剣に検討、主張していかなければ、取り返しのつかない結果へと進んでしまう。何度も訪れているが、今回も重要な正念場の一つであるとの共通認識で臨むべきだろう。