今月7日に開かれた中央社会保険医療協議会薬価専門部会で、日本製薬団体連合会が加盟団体による原価計算方式で算出した場合に不採算となる品目数・割合を公表した。その中で、日本漢方生薬製剤協会(日漢協)15社の状況(6月末時点)として漢方・生薬2060品目のうち56.0%を占める1153品目が不採算だと報告した。
原価計算方式は、薬価算定単位当たりの製造販売に要する原価に、一般管理販売費、営業利益、流通経費、消費税や地方消費税相当額を加えた額を薬価とする算定方式である。ここでは、昨今の物価高騰以外に採算性を悪化させる製剤特有の要因として、漢方薬の原料生薬輸入の8割を中国に依存し、中国国内の経済発展や需要増などで原料生薬価格が年々高騰していることを挙げている。
漢方・生薬2060品目のうち、医療用漢方製剤では580品目中501品目(86.4%)で、生薬製剤は9品目全て、生薬は1471品目中643品目(43.7%)で不採算であることも示された。
漢方薬は天然物由来の原料生薬を用いており、多くが農産加工物となる。生産者、流通、加工が施され、各処方に配合されている。このため関係者からも「今の生薬薬価では国内の生薬原料の安定供給が難しい」と懸念の声も聞かれていた。現行の薬価算定方式では、漢方・生薬製剤の半数以上の品目が不採算となるのが実態ということだろう。
中国から日本に輸入される漢方薬の生薬原料価格が高値となっている背景には、世界情勢の影響もある。人件費、運送費、光熱費が上昇したことで各原料原価も高騰。為替レート変動の影響もあり、生薬の輸入価格に大きく影響を及ぼし、生薬原価が3倍もしくはそれ以上に高騰しているとする声もある。
また、中国では、国内向け生薬原料需要の拡大に伴う乱獲による資源減少などで野生植物の保護活動も強化され、輸出が困難になった品目も出ている。このため、生薬原料の供給の安定確保に不安が生じ、供給数量の減少から品質上の不安も高まっているとの現状もある。
日漢協のデータによると、国内では2008年度に2万0763トンだった生薬総使用量は、20年度に2万7997トンと34.8%増加するなど需要自体は高まっている。ただ、総使用量のうち中国産が82.7%、日本産が10.3%、その他の国が7.0%という割合で、依然として中国依存の現状は続いている。
生薬の国内生産の振興策も進められてはいるが、国内では低価格の輸入生薬が主流で、国産生薬の需要が拡大するのは容易ではない。原料生薬は植物由来でもあるため、収穫量の変動が直接価格に影響する場合もある。漢方薬治療の医療上の必要性や安定供給の課題も含めて、国内生薬生産の自給率を高めるための施策に向けた議論が望まれるところだ。