大日本住友製薬の多田正世社長は11日、2008年度決算説明会で会見し、海外進出の足がかりとなる統合失調症治療剤「ルラシドン」について、「最初のPIII試験解析結果を受け、成績が良ければ、今秋までに米国での販売体制のあり方を決定する」スケジュールを明らかにした。また、09年度の最重点取り組みとして、国内収益基盤の強化、経営効率の追求、海外事業に向けた体制整備の推進を挙げた。
多田社長は、ルラシドンのPIII試験解析結果について、「20日(現地時間)に米国で開かれる精神病学会で発表される」と報告。試験結果を受けて今年秋までに、[1]自社だけの販売[2]他社とのコ・プロモーションによる販売[3]販売力を持った企業の買収‐‐のいずれかで、ルラシドンの米国における販売方法を決定することを明らかにした。
さらに、08年度に528億円(対前年比11・7%増)を計上した研究開発費にも言及し、「ルラシドンの海外自社開発などで、09年度はさらなる増加が見込まれるが、09年度がピークになる」と説明。「10年度からは、ルラシドンの開発で計上されている約114億円がなくなるので、相当減少すると思う」との見込みを示した。
09年度の最重点取り組みについては、「アムロジンが特例引き下げになる可能性もあり、10年の薬価改定を重く受け止めている」とし、「薬価改定で被る影響の大きさに対応するには、10年度以降も見据えた対応策が必要不可欠になる」と話した。
09年度の最重点取り組みの一つである国内収益基盤の強化では、組織体制として「営業本部組織体制の刷新」「地域別損益管理システムの導入」「ディテールのさらなる向上」を図ることにしている。多田社長は「地域別損益管理システムは画期的な試みで、従来の地域における売上管理から、さらに一歩進んだ利益管理を行うもの」だと説明した。
ディテールのさらなる向上についても、「合併後の営業力を過大評価し過ぎたきらいがある」と分析。「自分の得意な製品のディテールだけを行う傾向が強くなれば、合併でMRが増えてもシナジー効果は期待できない」とした上で、「MR教育を中心に対応策を練りたい」とした。
一方、国内収益基盤の強化に向けた製品戦略としては、「戦略4製品の価値最大化」「アバプロ、ロナセン、トレリーフなどの新製品への営業注力」「開発後期化合物の導入促進」を挙げた。