次期医薬品医療機器等法改正で医薬品販売制度の見直しをめぐる議論がこれから正念場を迎える。乱用の恐れのある医薬品の販売規制が大きな焦点だ。青少年による市販薬のオーバードーズが社会問題化する中、インターネットでの販売を禁止するなど規制強化を進める方向で検討が行われているが、規制面の対応だけではOTC医薬品の乱用を食い止めることはできない。
薬剤師や登録販売者の専門家が適切に販売可否の判断を行うことで、医薬品アクセスの確保と大量・頻回購入の防止を図る足下の対応を考えるべきだ。規制面の対応と同時に専門家が関与した販売体制の整備も不可欠となろう。
厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では「購入者の直接手の届かない場所に陳列する」との厚生労働省案に、ドラッグストアの業界団体である日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が反発。厚労省は、「薬剤師または登録販売者が販売場所に常駐するなど陳列以外の方法による対応」の必要性も含めて検討を行うとし、急遽、専門家常駐案が議論の俎上に上がった。
薬局やドラッグストアの売り場で専門家が常駐する体制は望ましい姿である。日本薬剤師会の岩月進会長も1日の記者会見で「薬局・ドラッグストアは医薬品を販売する専門店であるのだから、専門家がいて当たり前」と強調した。
しかし、専門家常駐が実現したとしても乱用防止のゲートキーパー役になれるかについては疑問が残る。
厚労省が9月に公表した2023年度医薬品販売制度実態把握調査では、相談を行わずに一般用医薬品(第1類を除く)を購入しようとした際の専門家の対応に関する調査を初めて実施し、「質問等されずに医薬品を購入できた」との回答が2割強に上った。専門家を常駐させても適正に販売していないのであれば資格者の存在意義が疑われる。
合格者数が累計41万人を超えた登録販売者の教育を真剣に考える時期に入っている。医薬品販売店舗に専門家を常駐させるとなった場合、薬剤師の地域偏在などで専門家の確保が難しいのであれば登録販売者がカバーしないといけない。厚労省検討会でも名称を「医薬品登録販売者」に変更するよう提言された。
それにも関わらず、国の政策は薬剤師の資質向上ばかりに焦点が当てられ、登録販売者を育てる意識が希薄ではないか。
昭和大学薬学部が行った研究では、薬物乱用経験者の約7割が「薬剤師など有資格者による販売可否の判断は乱用目的の大量・頻回購入の抑止につながる」と回答した。乱用経験者の主な購入経路は「薬局・ドラッグストア」が8割を超えていた。裏を返せば、有資格者が販売可否判断をしっかりと行えていないから乱用につながっているとも考えられる。登録販売者の養成は乱用を食い止める手立てになるはずである。