日本OTC医薬品協会会長 杉本雅史
わが国の医療の提供体制は、世界に冠たる国民皆保険制度の下で、安心して医療にかかる環境が整えられてきました。一方、高齢化の進展に伴い疾病構造の変化も進み、生産年齢人口は、2025年以降さらに減少が加速し、65歳以上人口は40年を超えるまで増加が続きます。
医療の地域偏在といった問題も顕在化しており、必要な医療を必要な時に受けることができる医療提供体制と国民皆保険制度を将来にわたり持続可能なものとするために、生活者の健康寿命の延伸を図りつつ、限りある医療資源を効率的・効果的に活用する必要があるという極めて重大な社会課題に対し、自分の健康は自分のために自分で守るというセルフケアや、軽微な身体的不調は自分自身で手当てするセルフメディケーション実践の普及促進に取り組んでいます。
24年の協会活動では、2年目を迎えたアドバイザリーボードで高齢長寿社会に貢献するセルフケア・セルフメディケーション、医療提供体制と国民皆保険の存続についてといったテーマで外部の有識者との意見交換を行いました。
また、アカデミア等と学術的な見地からOTC医薬品のあり方を検討していくために、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会にOTC分科会を設置し、シンポジウムを開催するなど、ステークホルダーの皆様との連携や協力を念頭に置き、業界の独り善がりではない広い視野や多くの知見から、国民の健康医療に貢献できる政策提言や活動へ発展させることを目指してきました。
23年末の規制改革推進会議の中間答申を受け、厚労省、PMDAと共同で設置したスイッチOTCワーキンググループでは、スイッチOTCを促進するための仕組みを整え、これからのセルフメディケーションの範囲拡大に一歩踏み出すことができました。
本年は、今後5年間の活動指針として新たに取りまとめた「ステートメント2030」に基づき、セルフメディケーションDXの推進をはじめとするセルフケア・セルフメディケーションを取り巻く環境整備を進めます。
生活者がセルフメディケーションに取り組む唯一の支援策であるセルフメディケーション税制の見直しのタイミングであることから、制度の恒久化と全OTC医薬品、OTC検査薬への適用範囲の拡大に向け、引き続き関係団体やステークホルダーの皆様との対話を大切にしつつ、協会の活動を推進していきます。