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【東京科学大/東大】蛍光分子との結合で蛋白質が動き出す「分子ドミノ」を開発

2025年03月05日 (水)

 東京科学大学の上野隆史教授らと、東京大学等の研究グループは共同し、蛍光分子等のスイッチ分子の結合をトリガーとして、蛋白質の動きを協働的に制御する分子設計技術「分子ドミノ」を開発した。外部刺激に応答する生体分子ロボットの創出や、難水溶性化合物の薬剤輸送への応用が期待される。

 蛋白質デザインは、AIを用いて蛋白質の構造と機能を狙い通りに設計する技術が発展してきているが、蛋白質の“協働的な動き”を分子レベルで制御するような設計は極めて困難とされている。

 今回の共同研究では、蛋白質内にスイッチ分子が結合するようなポケットを設計し、その周囲に複数の芳香族残基を配置することで、ポケットと隣接した芳香族クラスターを有する蛋白質を構築した。この蛋白質は、適切な形状のスイッチ分子が結合することをトリガーをして、内部の芳香族残基の配向変化が連鎖的に伝搬する特徴を持つことから、このシステムを「分子ドミノ」と名付けた。

 研究チームは、蛋白質のポケットおよびその周囲に芳香族アミノ酸の一種であるフェニルアラニン残基を複数導入した蛋白質を大腸菌で発現し、カラム精製を行った。

 次に、設計した蛋白質溶液の芳香族蛍光分子(ナイルレッド、クマリン153あるいはDCM)を、50℃で24時間混合した。混合液を透析・結晶化し、X戦結晶構造解析を行った結果、ナイルレッドおよびクマリン153が、設計した分子ポケットにπ-πスタッキング相互作用を介して固定されていることを確認した。

 ナイルレッド結合時には、ポケット周辺のフェニルアラニン残基の配向が変化し、協働的な構造変化を示した。クマリン153が結合した場合には、芳香族クラスターの動的変化が結合する蛍光分子の構造に依存することを確認した。このことは、適切形状の蛍光分子を添加することで、分子導体の精密な制御が可能であることを示している。

 また、ナイルレッドが示す蛍光量子収率が、溶媒液中に遊離している状態(50%)に比べ、分子ポケット内に結合することで88~95%に向上することを確認した。これにより、設計した分子ポケットおよび芳香族クラスターは、材料的な観点から興味深い物性を示すことが分かった。

 今回使用した蛍光分子は、いずれも複数の芳香環を分子骨格に有し、水に溶けにくい性質があるが、設計した蛋白質溶液と混合すると、蛋白質に内包され、水に溶けるようになることを、分光学的計測や結晶構造解析から明らかにした。医薬品候補化合物の中には、芳香環を分子骨格に持ち、水に溶けにくいものも多いことから、今回設計した蛋白質は、多様な医薬品化合物の取り込みと薬物輸送にも応用できる可能性がある。



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