【東大グループ】抗血小板薬の効果を見る評価法開発‐AI用いリアルタイムでの判定へ期待

2025年05月20日 (火)

 東京大学大学院理学系研究科と東大病院検査部、同循環器内科の共同研究グループは、冠動脈疾患患者から採取した血液内の循環血小板凝集塊を、マイクロ流体チップ上で高速流体メージングにより大規模撮影し、AIを用い画像解析することで、従来の手法とは異なるリアルタイムかつ直接的な血小板機能評価を行った。その結果、冠動脈疾患患者は健常者と比較し、血小板凝集が亢進し、抗血小板薬の数に応じて血小板凝集が抑制され、さらにそれらは静脈と動脈のいずれの部位でも同様に認められることを示した。この成果は、冠動脈疾患患者のスクリーニングや、血小板療法の個別化、最適化、非侵襲モニタリングへの貢献が期待される。日本時間15日に「Nature Communications」のオンライン版で公開された。

 冠動脈疾患において血栓は重要な役割を果たし、血小板凝集を抑制する抗血小板薬は冠動脈疾患管理に必須となっている。しかし、生体内において血小板凝集の程度を直接評価することは、従来の血小板機能評価方法では困難だった。

 今回、同研究グループは、以前にCOVID-19患者において確立した生体内におけるリアルタイムな血小板機能評価方法を用いて、冠動脈疾患患者における血小板動態を評価した。

 東大病院に入院し心臓カテーテル検査・治療を受けた冠動脈疾患患者(207人;うち急性冠不全症候群42人、慢性冠症候群165人:男性169人、女性38人)から採取した血液中の循環血小板凝集塊を調べた。

 具体的には、心臓カテーテル検査・治療前あるいは検査・治療時に静脈から採取した血液サンプル(207人)、同検査・治療時に末梢動脈および冠動脈から採取した血液サンプル(129人)を処理後にマイクロ流体チップ上で流し、2020年に東大病院検査部に設置した特殊な高速流体イメージング技術で血液サンプルごとに多数(2万5000枚)の血小板および血小板凝集塊(血小板のみの凝集塊、白血球を含んだ血小板の凝集塊)の画像を短時間に得ることで、循環血小板凝集塊の画像ビッグデータを取得、AIを用い様々な統計解析を行った。

 その結果、冠動脈疾患患者では、健常者と比較して循環血小板凝集塊の出現頻度が有意に高く、その程度は急性冠症候群でより顕著だった。これは、急性冠症候群患者の末梢血における血小板凝集の亢進が、全身的な血小板活性化を反映していることを示唆しており、同患者らの血栓リスクが特に高いことを意味している。これは、簡便な血液学的・生化学的マーカーが不足している現状を踏まえると、特に重要といえる。

 次に、抗血栓療法(抗血小板薬および抗凝固薬を含む)に着目し血小板凝集塊の出現頻度を比較した。207人のうち、68人が抗血栓薬を1種類、111人が2種類以上を服用していたが、血小板凝集塊の出現頻度は抗血栓薬を服用していない群と比較し抗血栓薬服用群で有意に低下した。特に、抗血小板療法の種類で血小板凝集塊の比較を行うと、抗血小板薬1種類および2種類服用の群は、いずれも抗血小板薬を服用していない群と比較し有意に血小板凝集が抑制されていた。

 最後に129人において、血液サンプル採取部分における血小板凝集塊の出現頻度の関係を検証した結果、静脈血と末動脈梢血、冠動脈血のいずれも良好な相関を認めた。特に、全ての検体採取日が同一であった36例では、より強力な関係性が認められた。これは、冠動脈疾患は動脈血が主体であるにもかかわらず、静脈血が冠動脈疾患の病態や抗血小板療法の有効性の信頼できるマーカーとなる可能性も示唆している。これは、冠動脈疾患の非侵襲的モニタリングと管理に重要な意味を持つ可能性がある。

 同研究グループは今後、既存の薬効評価方法との関連性を検証することで、この手法の実臨床への応用可能性を検証すると共に、血小板凝集抑制の程度と実際の血栓症や出血といった臨床イベントとの関連を検証することで、実臨床におけるモニタリングツールとしての有用性についても検証が必要としている。

 なお、東大とCYBOは、共同研究契約を締結しており、今回の研究成果の実用化などを目指している。


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